本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

ネオ子育て~親子で知的好奇心を伸ばす~ ー 草野 絵美 著 ー

今回は、久々に子育てに関する本を紹介していきたいと思います。まずは、著者の紹介です。草野絵美さんは、学生結婚で子どもを産み、今は9歳と0歳の息子さんを育てられているようです。NFTでギャルバースというものを企画し、ネットに詳しい人たちには知られている存在のようです。わたしは、たまたまユーチューブで見ていた動画で名前が出て興味を持ちましたが、普通に生活していると出会えなかった方だと思います。経歴は、慶応大を卒業後、子育てをしながら大手広告会社で働き、今はいろいろなコンテンツを作ったり、アーティスト活動をされているようです。本を読むと、すごーく頭の賢い方だと分かりました。

これまでの教育ママの子育て本とは違い、「親子が対等な関係を築き、親は子どもを優先して犠牲になるのではなく、親自身も自分の好きなことで自己実現をする」というメッセージを伝えているところが魅力的でした。これからの若いパパママに読んでもらいたいチョーおススメな一冊です!!

 

では、内容を短くまとめます。

『親が常に自分をアップデートして、子どもの知的好奇心を伸ばし、ともに成長していく「ネオ子育て」で子育て革命を起こそう』です。

 

3つのことについてお伝えしたいと思います。

レジリエンスを育てる

知的好奇心を伸ばす

親が人生を謳歌する

 

レジリエンスを育てる

これまでにも何度か紹介しているレジリエンス(心の回復力)は世界で活躍している方々が持っている大切な力です。小さな時から、親が子どもを抱きしめたり褒めたりして安心な状況を作るとオキシトシンが分泌し、自分の存在を認め、他者にも優しくできると言われています。レジリエンスを育む方法として①「なにがあっても親が味方であること」を伝える ②先回りせず失敗をしても子どもを信じて見守る ③「信じられている・相談に乗ってもらえる」という体験を重ねるの3つが紹介されています。これは、我が家でも前から実践していますが、少しずつレジリエンスが高まってきていることを実感しています。

さらに、褒め方も大切です。やってはいけないのが「成果に対して過大に褒めることや感情を入れずにとりあえずほめること」これは、親の興味が子どもにないと勘違いされてしまいます。やるべきは、「努力やプロセスをフィードバックしながら褒めること」です。こうすることで、難しい問題でも「もっと頑張って解決したい」という思考回路を作ります。こうすれば、困難に立ち向かえる強い心を作ることができ、これが、将来に大きく役立つことになります。

これまでの教育は、心というより学習スキルに重点を置き、「学歴を高めて安定した仕事につく」という価値観でした。しかし、AI化が進むにつれてこの価値観では子どもが将来不幸になることが見えてきました。そんな時代にもかかわらず、親は自分が両親から受けてきた教育をそのまま我が子にしていることがまだまだ多いと思います。だから、子育てを将来を見通した投資と考えずに、「いい学校に行くために塾に通わせる」のように、その場しのぎの課金になって我が子のためになっていない可能性があります。これでは、教育産業に課金をして貢献していますが、我が子が将来を生き抜く力を育んでいないことになります。

 

知的好奇心をのばす

小さな子どもは、必ず何か1つくらいはハマるものがあります。例えば、電車やアンパンマン、レゴなどです。これをやっていると過集中してとまらない状態のとき、子どもの知的好奇心が旺盛になっています。これを利用して、ハマっているものを親子でより深堀していきます。ハマっているものを見せに行くだけではなく、インターネットを使って一緒に調べたり、簡単なグッズのようなものを一緒に作ったりすれば、子どもはますますハマり、もっと〇〇したいと、次の欲求が生まれます。これが、子ども主体で好奇心を伸ばすコツです。小学生くらいになると、レベルが上がります。本では、お子さんがコロナウイルスに興味を持ち、そこから細胞について好奇心が高まり、親子で「はたらく細胞」など見たり調べたりして、勉強しようと言わなくても勝手に自分でググりだしたと書かれていました。このようなことを繰り返せば、「学ぶ=遊び」の感覚をつかみ、欲求を満たすために勉強するという状態になります。こうすれば、学校の勉強でも、興味を持ったことを自分で勉強することになり、親が「勉強しなさい」と言わなくても、自分でできるようになっていきます。

著者のお子さんは、アイロンビーズが好きで、作品をメルカリで販売していたようです。もちろん、親が協力をしながら自主性に任せてやっていたようです。その後、イラストなども書くようになり、せっかくならNFTにも出品しようとなったようです。このときに、どんな題材が世界でうけるのかを親子でマーケティングし、海外で人気のゾンビとみんなが好きな動物を合わせた「Zombie  Zoo  Keeper」というものを生み出し、世界で売り出したところ4千万円ほどの売り上げが出たそうです。もちろん、このお金はお子さんの将来の学費などにするそうです。小さいときから、ビジネスについて知り、自分に必要なお金を稼ぐという次世代の教育に感動しました。

 

親が人生を謳歌する

「親になっても何も諦めなくていい」という最初の強いメッセージに共感しました。親になると、これまでの生活とは一変するのが普通です。特にママは、授乳やご飯など子どもの世話が1日のほとんどになります。そんな中、著者も疲労がたまり我慢して子育てする自分を変えたいという気持ちから、「親という別の生き物に生まれ変わるのではなく、個人として生きてきた延長線上で親になる」と決めたそうです。親が我慢ばかりしている姿を子供に見せるのではなく、人生を楽しむ姿を見せることで、子どもの将来に良い影響が出ると考えました。子育てと仕事を両立させるために、情報を入れたり勉強したり人を頼る技術を覚えたりしないといけません。このスキルを手に入れることで、仕事にもいい影響が出ました。本で紹介されているのは、「子育てに必要なレジリエンス強化の方法が部下の育成に役立つ」「子育て時間を確保するために効率化を考えタイムマネジメントができるようになる」「想定外のことにも対応できる問題解決能力」「失敗があっても何とかなる考えるメンタル」などです。こう考えられるようになると、「子育て=仕事の足かせ」ではなく、子育てを利用して、自己開発できるようになります。この点からも、著者の聡明さが感じられました。

 

日本では、まだまだ子育てする親(特にママ)が仕事で活躍できるような仕組みができていません。保育園などの設備は整えられていますが、ベビーシッターの利用率は低く、突然何かあったときやプライベートを楽しむための時間の確保がしづらい状況です。ネオ子育ては、親の価値観を変えるだけじゃなく、社会全体の価値観をアップデートしないといけないという強いメッセージが入っているような気がしました。

景気減速が気になる状況ですが、希望をもって新しい子育て・新しい社会になるように何かできることをしていこうと感じました。

それでは、今日はここまでにして、次の本でお会いしましょう!!