本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

「感情」の解剖図鑑 ー 苫米地 英人 著 ー

今回紹介するタイトルを見て、感情という目に見えないものを図鑑にすることなんて、できるのかと思われた人もいるかもしれません。しかし、この本は、感情について科学的にどのように作られ、どのようにコントロールすればよいかが書かれています。しかも、コーチング的な見解も書かれていて、わたしにとっては、すごく面白い本でした。おススメ本です。

 

著者の紹介をします。苫米地さんは、脳科学者でありコーチングプログラムなどの開発もされている方で、人間の感情をどのように活用すればよいか研究されている方です。だからこそ「感情」解剖図鑑というタイトルにも説得力があります。オウム真理教徒の洗脳を解いたりもしていたようです。

 

それではさっそく内容を短くまとめます。

「もう感情に振り回されなくていい!感情は思い通りにならないものではなく、コントロールできる。これができれば、目標達成も簡単にできる」です。

 

「感情」というものは、脳科学的なメカニズムも重要ですが、人によって、それまでの経験や相手との関係性、タイミングによって「感情」の捉え方が違います。この本では、社会学的、人類学的な観点からも感情に迫っています。3つに分けて紹介していきます。

①感情が起こるメカニズム

②ネガティブ感情

③ポジティブ感情

 

①感情が起こるメカニズム

今現在、科学的に分かっていることが書かれていますが、まだ分かっていないところも多いようです。感情のメカニズムを知るには、「ブリーフシステム」と「情報処理のプロセス」を理解する必要があります。「ブリーフシステム」は、自分が強く信じている固定的な思考による認識のパターンです。これには個人的傾向があります。簡単に言うと個人的な信念のようなものです。「情報処理のプロセス」は、脳の古い部分にある偏桃体や海馬が強く関係します。情報が入ってくると海馬が過去の記憶で近いものを探します。その情報がプラスかマイナスかで処理され、前頭前野と連携して、情報によって感情を選びます。そして、偏桃体がその感情を増幅させます。このプロセスの中で、マイナスならノルアドレナリンが、プラスならドーパミンセロトニンといった脳内物質が放出されます。少し難しいですが、このように、様々な感覚から得た情報を自分の信念に照らし合わせ、脳で分析し、脳内物質がでることで様々な感情を作り出しているのです。

 

②ネガティブ感情

「怒り」「緊張」「嫉妬」の3つについて紹介していきます。

「怒り」は「怒られる、裏切られる(敵からの攻撃)」などから起こる感情です。この2つを比べると、ブリーフシステムで想定していなかった「裏切られる」の方が怒りは強くなります。怒りのメカニズムとしては、「敵からの攻撃」と脳が判断すると、偏桃体で感情が増幅されます。そうすると、ノルアドレナリンが分泌され、交感神経が優位となり気持ちが昂ります。すると前頭前野の働きが抑えられ冷静な思考ができなくなります。しかし、少し時間がたてば、セロトニンが分泌され、怒りが収まります。

怒りをコントロールするには、瞑想や深呼吸で副交感神経優位の状態にしセロトニンを分泌しやすくします。また、論理的な思考をすれば、前頭前野の機能低下を防ぐことができます。なので、どうすれば復讐できるかなど、細かな思考を巡らせることで怒りの感情が収まってきます。

「緊張」は、心身にストレスを受けると感じる感情で、交感神経優位となります。「恐怖や不安」を感じると、偏桃体が活性化し感情を増幅させ、前頭前野の働きが低下しIQが下がります。アウェイでは、ヤジなど環境によるストレスを感じることでIQが下がり冷静な判断がしづらくなります。だから、緊張しすぎるといつもの力が発揮できません。

緊張をコントロールするには、アウェイ感をなくすうように、その場を「見慣れた場所・いい経験をした場所」となるようにポジティブな思い込みができるように事前準備をします。適度な緊張は、集中力が増しいい結果を招くこともあるので、緊張を受け入れることも大切です。

「嫉妬」は、大きく2つに分けることができます。1つは、恋人を取られるなど「人間が動物であるがゆえに生まれる嫉妬」です。恋愛にまつわる感情は、種を残すうえで必要な動物的な感情なので、前頭前野の働きが低下し、冷静な判断を下せなくなります。2つ目は、「自分と他人を比べて評価に対する嫉妬」です。これは、社会的な行為なので、「他人との比較」という本来は感じなくてもよい感情です。この嫉妬には、あまり意味がありません。

嫉妬をコントロールするには、恋愛に関する嫉妬の場合は、まず自分が嫉妬しているという事実を認識し、これまでの恋愛や自分の行動の良くなかったところなどを冷静に考えることで、前頭前野が活発になり、冷静さを取り戻します。他者との比較による嫉妬の場合は、そもそも比較が無意味だと理解し、自分のゴールに対して他者の評価が適当かを考えます。そうすれば、至らない自分に気づき、自分の成長につながります。

 

③ポジティブ思考

「幸福」

「幸福」は、「楽しい・うれしい」という感情に比べて、長く続く傾向があるようです。「幸福」は、自分の信念が深くかかわっていて、他人からすると幸福に思えないことでも、ドーパミンが強烈に放出されることで起こることがあります。だから、恋人からの暴力や宗教の洗脳でも幸福を感じるようです。「幸福」の価値観は、メディアなど影響が強く影響していて、常識的な幸福が「いい学校に入り、いい会社に入る」だとすると、それが幸福だと勘違いして、最終的に不幸になることもあります。本当の幸福を手に入れるには、自分にとっての幸福が何かをしっかりと考える必要があります。

「感謝」は、相手の行為によって、積極的評価をしてありがたく感じる気持ちです。何かに感謝したとき、神経伝達物質ベータエンドルフィンが分泌され気分よくなったり免疫力を高めたりして、自分も幸せな気持ちになります。日本には、お互いに感謝し合うといういい文化が残っています。海外では、サービスに対してチップなど対価を払う習慣がありますが、日本では、サービスに対して感謝の気持ちで接するように感情が重んじられます。動物は、「種を保存させる」ことが最優先となるため、親に対しての感謝はないようです。感謝は、高度に情報化された非常に人間的で素敵な感情です。

「好奇心」は、新しいことや未知のことに対し、興味をもって探求しようとする感情で、人それぞれドーパミンが分泌される量が違います。一般的に好奇心の強い人は、「行動力がある・知性的」と評価されますが、人間が生き残るための知恵で、不可欠な力です。動物は新しい環境に身を置くと、自分の命を守るために、「敵はいないか・エサはどこにあるか」と偵察をします。人間も同じで、特に子供は知らないことばかりなので、危険なことでもすぐにやってみようとします。「好奇心が強い」人は、初めてのことにも積極的に取り組むことで、「生きるために環境をできるだけ知りたい」という本能的な欲求が強い人と言えます。

好奇心を持ち続けることは、社会生活を続けるために必要不可欠です。好奇心により、今までにないものを取り入れることで、新しい価値観が生まれます。好奇心を持ち続けるには、自分のゴールをもち、そこに近づきたいという思いが大切になります。

 

この本には、他にも様々な感情についての解説が載っています。自分が気になる感情だけでも読むと参考になると思います。それでは、次の本でお会いしましょう!!