本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

最新の脳科学で分かった!自律する子の育て方  ー 工藤勇一・青砥瑞人 著 ー

本日紹介する本は、私の専門「子育て」と大好きな「脳科学」のプロ二人がコラボして書かれています。素晴らしくて面白い、ためになる本です。文庫本で読みやすく、集中してあっという間に読み切り、気付けば付箋だらけになっていました。

今回も子育てに困っているお母さん・お父さん、そして教師に読んでいただきたいチョーおススメ本です。

 

ではさっそく、著者の紹介をします。一人目は工藤勇一さんです。教師をはじめ、教育に関わる公務員として定年まで、様々なことをされていました。特に、東京都の麹町中学校の校長として、これまでの常識を覆す教育をされました。定期テストの廃止など子どもが自律して学ぶ場としての学校づくりをし、メディアでも取り上げられました。今回本を読んで、教師たちがコーチングを意識して指導をしていることを知り、感銘を受けました。

二人目は青砥瑞人さんです。この本で初めて知った方で、アメリカの大学で脳科学を学ばれ、今はウェルビーイングの研究などもされている研究者です。人の脳と行動が密接にかかわっていることを理論的に説明されていて、とても聡明な方だと思います。

 

本の内容を短くまとめると「社会で生きていく力を身に着けるためには、小さいときから当事者意識をもち、自律できるように学ぶ環境を作ることが大切だ」です。

 

キーワードである①「心理的安全性」②「メタ認知について解説していきます。

 

①「心理的安全性」

脳科学的に言うと、脳は素晴らしい能力を持っているが、全力で能力を使い続けるとすぐ電池切れになってしまう。だから、とにかく省エネを意識して、効率よく使えるところを使って他は休憩している状態になります。よく使うところは電気信号が通りやすい舗装された道路の状態(習慣化された行動)、使わないところは電気信号が通らないけもの道(苦手な行動)の状態になります。習慣化された行動はストレスなく行けますが、苦手な行動にはストレスがかかります。

脳はストレスを抱えると効率的に働けなくなり、この時、優秀であるはずの脳が機能不全を起こして、心理的危機状態になります。そうすると、さらにストレスホルモンが出て、テンぱったり鬱っぽくなったりします。子どもは、この状態になっていてできないことに気付いてもらえず、親や先生から罵声を浴びることがあります。そうすれば、自己肯定感も下がってしまいます。

この負のスパイラルにならないために、心理的安全性が必要になります。心理的安全性が保たれているときの適度なストレスは、むしろ集中力を高めることができます。これはノルアドレナリンの分泌によるものです。これにより、モチベーションが高まりやる気スイッチも入ります。そして、子どもたちは、好奇心が高まり「やってみたい」と願いをもちます。このとき、ドーパミンが大量に出されています。ノルアドレナリンドーパミンが出れば、無双状態です。少々のことは自力で突破することができ、自信をもつことができます。こうなれば、自己肯定感が高まり、ストレス耐性もでき、苦手なことでも、脳は効率よく働くようになり、正のスパイラルになります。子どもたちは当事者意識をもち、自律に向かって邁進することができるようになります。

 

②「メタ認知

メタ認知とは、簡単にいうと「自分を知る」ことです。メタ認知能力が高い人は、自分の特性や癖を把握することができ、目標達成能力や課題解決能力が高いと言われています。メタ認知のポイントは①「自分の捉え方」②「自己について学ぶ」です。主観で考えるのでなく、自分を他人として捉え複数の目でいろいろな角度から自分を捉えることが大切になります。

ただ、自己を内省すると脳の効率が下がり、負担がかかるため苦手な人も多いようです。また、自分で考えず他者からの評価を鵜吞みにして「自分はこんな人間だ」と依存的に考えてしまうこともあるようです。こうなると、自分の得意なことに気付けなかったり、間違った捉え方を信じ込んでしまいます。

メタ認知力を鍛えるためには、「葛藤」が大切になります。正解が分からない状態で、どちらかを決めるためには、大きなストレスがかかります。子どもは、葛藤を一人で解決することは難しいので、親や教師がサポートしながら解決の道を見つけていきます。結果にとらわれるのではなく、どちらを選んでも成長に意識がいくように仕向けていけば、子どもは葛藤=成長と捉えることができるようになり期待感をもちます。この時、自分を振り返りながら葛藤させるのではなく、大人が道を作ってしまうと成長せず、不満があったときに人のせいにするようになってしまいます。よくあるのが、進路についての葛藤です。これは、メタ認知力を鍛える絶好のチャンスだと捉え、子どもの思いを生かせるよう大人がサポートすることが大切です。

もう一つ「夢」も大切です。「夢」を実現させるには、ありたい姿を想像し思い続けることが大切です。日々、自分のことを振り返りながら自分の強みや課題、信念などと向き合ってどんどん解像度を上げていくことで、メタ認知力も高まっていきます。

メタ認知力が高まると、自分の幸せと常に向き合っていくことができるようになります。幸せはどこかに求めるのではなく、自分の中の幸せに能動的に向き合い続けることでウェルビーイングを実現することもできるようになります。このように、自分について学び続けることは幸せへの近道なのかもしれません。

 

まだまだたくさんいいことが書いてありましたが、残りは本を手に取って確認してください。絶対に損はしないと言い切れます。

素晴らしい本との出会いに感謝して、終わりたいと思います。ではまた、次の本でお会いしましょう!!