Q-U式 学級づくり ~ギャングエイジ再生「満足型学級」育成の12か月~ ー 河村茂雄 著 ー
今回ご紹介する本は、教師に特化して読んでもらいたい一冊です。
4月のこの時期は、新しい学級担任が決まり、「今年こそはこんな学級にしたい」「前年までとはやり方をバージョンアップさせたい」と考える教師が多いと思います。そこで、何かしらヒントになればと、初めて教師以外は読まないであろう本をあえてチョイスしてみました。
まず、著者の紹介です。この本の執筆にはたくさんの教師が関わっているようですが、一番メインの河村茂雄のみ紹介します。元公立学校の教員や教育相談員を経験され、今は早稲田大学の教授をされています。グループエンカウンター・ソーシャルスキル等の人間関係構築について研究され、アンケート方式で学級集団の現状を可視化するQ-Uという方法を提唱された研究者です。
今回は、先生以外イメージがつき辛いかもしれません。まとめを見てよくわからない方は、最後まで読んでいただかなくても大丈夫です。簡単に内容をまとめると
「Q-U(子どもや学級を共通理解するための指標)を使って、教師としての指導の型を作り、それに相違を加えて自分らしい学級経営をする。それこそが、型破りな教師だ」です。
新学期に大事なことに絞り、3つの内容を説明します。
①Q-Uのデータから見る学級集団の基本要因
②学級づくりで押さえておきたいこと
③新学期の学級開きの指導法
①Q-Uのデータから見る学級集団の基本要因
学級に満足している、いじめ・不登校がない、学力が定着しているといった良い学級をデータから読み解くと「親和的でまとまりのある学級集団」という状態になっているそうです。この学級は良い対人関係を築くスキルが高く、ルールが定着し、相互に信頼感が高まっていて、問題が起こっても建設的に対応していけると書かれています。こんな学級に近づく大きな要因が〈ルールの確立〉と〈リレーションの確立〉です。この2つについて説明します。
〈ルールの確立〉
家での生活とは違い学校では、教室に集まった子どもたちがともに活動できるようになるために、共通の行動規範・行動様式を身に着けることが必要です。大人でも、公共の場での行動にルールがあるようなことです。これがないと、学級は無法地帯となり自分勝手なルールばかりで統一されなくなり、トラブルだらけになってしまいます。それゆえに、他者との関わり方・集団生活の送り方・みんなでの活動の仕方にルールが必要になります。
ルールを定着させるためには、活動する前にどうしてこのやり方にするのかを子どもたちが納得するよう説明することが大切です。また、ルール違反は認めず、違反があった場合は、その都度なぜルールがあるのか、ルールを守らないとどんなことが起こるのかを伝え、自分から「ルールを守ると安心、気持ちいい」と感じるように教師が仕向けていきます。
〈リレーションの確立〉
リレーションとは、人間関係の中でも、ふれあいのある本音の感情交流がある状態です。リレーションが育つことで、子ども同士に仲間意識が生まれ、様々な活動で協力する姿が見られ学校生活が楽しいものになっていきます。
リレーションを形成するためには、ゲームや運動など身体活動を活用し、盛り上がりを作るとともに、活動の後は、静かに振り返りを行い、メリハリを作っていきます。また、自己主張が強くトラブルになるときには、話し合い方や仲直りの仕方を教えていくことも大切です。さらに、男女でグループが分かれ意見の対立が起こらないように、男女を平等に扱い、それぞれにリーダーになる子を育てていく必要もあります。
②学級づくりで押さえておきたいこと
(1)中学年の子どもの特徴や課題
〇自我が形成されはじめ、自他の違いに気づくのでその違いを行け入れることが難しくトラブルにつながります。
〇ゲームや漫画など、外の世界に興味を持ち始め、様々な友達と関わりをもつようになります。その中で、自分と合う行動パターンの友達とグループを作るようになる。
〇やる気に満ち溢れ、教師にしたいことをお願いするようになります。しかし、経験が少なく教師からすると危なっかしいことが多いです。そこで、教師が先を見通して、できないと判断するとやる気を一気に失います。だから、周りに迷惑が掛からずみんなで楽しめるような活動は積極的に任せます。そして、活動の後、成功や失敗を振り返り次につながるように仕向けていくことが大切です。
〇上級生・下級生の両方と関わる機会を作り、上級生がしてくれたことにあこがれて、下級生にやさしくできるようになります。
(2)中学年の集団作りの留意点
〇学級集団の良さを実感させるために、子どもたちには、体験重視で、試行錯誤を繰り返させますが、うまくいかないことにやる気を失わせないことが大切です。
〇学級のみんなと関わって一緒に活動することの楽しさを感じさせます。休み時間での遊びや話し合いを使った学習や教え合い学習を取り入れることで、生活が充実したことや自分の成長に気づかせることが大切です。
〇自分の考えを言語化させる習慣を作っていきます。学習では、答えだけでなく考え方や理由まで発表させます。トラブルのときには、どうしてトラブルになってしまったのか原因や自分のいけないところを明確にできるよう教師が質問をしながら言語化させることが大切です。
③新学期の学級開きの指導法
(1)1日目
担任発表のときには、子どもに好印象を与えるようなあいさつを考えておきます。そして、担任としてどんな学級にしたいのか、どんなことを大切にするのか(ルールなど)などを説明します。そのときは、真剣さや笑顔など表情を作ることも大切です。
(2)2日目
子ども通しの緊張をほぐすためにゲームを行います。よくするのは、あいさつとじゃんけんを組み合わせたゲームです。友達の話の聞き方、友達への話し方・伝え方のルールや話す聞くの重要性を教えます。また、自分たちでどんな学級にしていくのかを少しずつイメージできるように先生からアドバイスをしていきます。
(3)3日目
授業を始めていきます。授業の中で大切なのが、「始業の時間を守ること」「話を聞くときは静かにし、質問等はその後にして、先生の話をしっかり聞くことの重要性を感じさせる」「授業準備を休み時間にすます」「分かりやすく興味のあるものから始め学習の意欲を高める」などです。
最初が肝心!!今年の先生はちょっと違う。新しい一年が楽しめそうと子どもたちに期待をもたせるような出会いを演出してください。
今回は、始業式に間に合うように急ピッチに本の内容をまとめたので、さわり程度しか伝えられていません。私は新学期にはいつもこの本を読み直し、新学期のイメトレをしています。
今年度は、前年度よりさらに楽しい学級を作り、充実した教師生活が送れるよう気合いを入れています。でも、気合いの入れすぎでオーバーワーク、突っ走りすぎには注意してくださいね。それでは、次は普通の本でお会いしましょう。