本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

14歳からの資本主義

今回紹介するのは「14歳からの〇〇」シリーズで、中学生向けに分かりやすい表現で書かれています。わたしは資本主義と言われて、「そんなの知ってる、なんとなく分かる、学生時代に聞いた」など知っているつもりになっていました。が、ユーチューブなどで専門家の話を聞いていると、奥が深くて理解できないところが多いことに気付きました。基本から学びなおす必要があると思って、図書館に出かけたら、この本に出会いました。大人が中学生向けの本を借りることに、少し抵抗を感じましたが、借りてみて正解でした。学生時代に知った資本主義は、「物の値段は需要と供給で決まっている。株式のように資本家がお金を出し、株主が会社の監視をする。」など、「社会主義より資本主義の方が自由でいいよね。」程度の知識しかないことないことを再確認しました。資本主義が始まって300年程たち、産業革命・大量生産大量消費の時代で隆盛を極めた資本主義が大きな転換期に入っていることを、理解納得することができました。大人になってからこそ読むと面白い本です。おススメです。それでは、本の紹介に移ります。

 

①テクノロジーが格差を生む

②「欲望」が資本主義を壊す

 

①テクノロジーが格差を生む

資本主義の大きな発明で、今も産業の大きな役割を占めているのが金融です。これは、簡単に言うと、お金を貸して時間がたった分利子をとるというビジネスです。要するに、お金が勝手に働いてくれて時間が経つにつれて、利益を得るシステムです。このビジネスに大切なのが大量のお金です。お金持ちは資本家となり、個人や会社にお金を貸すことでリターンを得ることができます。このシステムは、当然お金持ちには利益が大きいですが、庶民はあまり恩恵を得ることができません。このシステムを続けてきたことによって、今地球は1割ほどの金持ちと9割の貧乏に分かれてしまいました。このように格差が広がっているのが現状です。

資本主義の基本的な考えとして、経済成長があります。ニュースでもよく聞くGDPがその国の成長を表しています。これまでの世界は、先進国がどんどんGDPを伸ばしていきました。しかし、先進国はもう十分に発展しているので、これまでのように成長できなくなってきました。その代わり発展途上国が、成長しています。一昔前の中国がそうでしたが、今は中国も先進国となり成長が鈍化してきています。

資本主義は、成長を意識しますので、様々な産業が競争することで技術革新が起こります。産業革命は、農業から工業へのきっかけとなりました。これは、農業だけをしていた人の働き方を変え、都市でものづくりをする人を増やしました。また、インターネットによる情報革命により、工業からサービス業へと産業をシフトさせました。さらに今では、AIが発達して、無人もしくは少人数でサービス業を始めることができるようになりました。これは、大きな技術革新であり、成長につながると考えることができます。しかし、これまで人間にしかできなかったことを、AIが取って代わることで人間の仕事を奪うことになっています。ということは、これから人間がしなければいけないことは、AIにはできないような創造性豊かな仕事を作ることです。そうしなければ、人間が仕事をして報酬を得るという、これまで当然できていたことができなくなり、生きていくことさえ難しくなってしまいます。

だからこそ、子どもたちにしっかりとした教育を受けさせる必要があると強く感じました。

 

②「欲望」が資本主義を壊す

現代で、資本主義がもたらしたこととして、①グローバル化、②「共感」の商品化、③デジタル技術の進歩があげられます。これは、ビジネスに大きな影響を与えています。そして、これらがねじれを起こし、市場が不安定となり、人間が求める価値観や欲望が分かりづらくなり、情報量の差が経済格差のきっかけとなっています。こんな不安定で難しい状況で、競争をし成長することを目指しているので、人間はどんどん疲弊しています。しかし、資本主義は成長を重要視するので、厳しい状況でもやめることができません。やめてしまえば生きていけないのではないかという恐怖感すら植え付けています。

人間は資本主義を求めるがゆえに、競争と成長を繰り返し発展するという良い結果を出すことができました。しかし、競争は疲弊するので、安定も求めるようになります。安定を求めることによって、大企業や官僚などが裏で談合し、楽して利益を得ようとする抜け道を見つけ出します。そうなると、一部の権力者がどんどん力をもつことになり、庶民が不満をもちます。こんなことが続くとデモなどが起こり、庶民の力で社会主義にシフトさせる国が出てくるかもしれません。そうなると、グローバル化で複雑に絡み合う国家間の衝突などが起こる可能性もでてきます。また、デジタル化の波に逆らうことはできず、一部の創造性がありお金をもっている人だけが大金持ちになります。すでに格差はとどまることを知らず、1%の大富豪と、99%の庶民(生活が苦しいほどの)と言われています。このままでは、資本主義の崩壊は、時間の問題です。これからは、資本主義の良さを残し、新たな資本主義にシフトしなければなりません。

 

今、日本は円安、高齢化などいろんな問題に直面し、成長する要素があまり見られません。だからこそ、競争と成長を意識して、つらい仕事を続け疲弊するのではなく、自分らしい生き方を見付け、ある意味創造的に自分の幸せを考えないと資本主義の崩壊とともに、生きていく力が失われるかもしれません。深いテーマになってしまいましたが、視野を広げて考える必要性を改めて考える機会になりました。中学生向けの本でも、十二分に勉強になることも分かりました。みなさんも、読んでみてください。

それでは、次の本でお会いしましょう!!