本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

大谷翔平・羽生結弦の育て方 ― 児玉光雄 著 ―

今回は、タイトルに引き寄せられて手に取りましたが、副題(子どもの自己肯定感を高める41のヒント)にも興味があり、ワクワクしながら読み始めました。

まず、スポーツ好きじゃなくてもご存じの二人。大谷君と羽生君。前からどんな子ども時代を過ごしていたのか気になっていました。一気に二人のことが知れるこの本は、わたしにとって神からの恵みのようでした。ノンストップでゾーンに入ったように集中して、あっという間に読み切ってしまいました。ちょーおススメ本確定です。

それでは、さっそく内容をまとめます。

『子どもの自己肯定感を高めるには、長所さがし伝えることと親子のコミュニケーション量を増やすこと。そうすれば、子ども自ら練習し「できた」という感覚を覚え、自分でも自己肯定感を高めることができるようになる』です。

二人の主役をテーマごとに、別々に紹介していきます。

大谷翔平編】

大きな夢の叶え方

モチベーションの高め方

 

大きな夢の叶え方

これからの未来はオールマイティーな教養ではなく、自分の得意分野に特化することが大切になります。もちろん、大谷君は、野球に特化しています。だからこそ、「自分の能力で無理なことはない」と考え、チャレンジすることができます。例えそのときに無理であっても「今の自分の実力はそこまで、だからこそもっと努力したい」となるので自分を否定的にとらえずに、前向きに次のチャレンジを見つけていけます。

エピソードとして紹介されているのが、お父さんとの交換日記です。これは、「野球チームのコーチを務めていた父親のおかげで試合に出ている」と言われないように、実力でレギュラーを勝ち取りたいという思いから始まったそうです。この日記は、「その日の練習の反省を書き父親からコメントや感想を書いて返す」という感じでやっていて、父親は凡事徹底を意識したコメントを書いていたようです。こうすることで、小さいときから目標をもって練習をするようになったようです。また、書いた日記に「黙読する・声に出して読む・聞く」といった作業を加えることで、自分自身で目標を確認することができるようになり、継続できるようになるようです。

10~12歳の時期を、ゴールデンエイジと呼びます。この時期は、脳・神経系の可塑性がとても高く動作習得に貴重な時間となります。3年生で野球を始めた大谷君は、5年生にして球速110キロをマークし、全国大会に出場しています。この大切な時期に子どもの長所を見逃さず、子どもとコミュニケーションを取りながら伝えていくことで自分の才能に気づき、自己肯定感を高めることができます。

このように、自己肯定感を小さいころから高めていた大谷君は、将来、大きな目標を達成する礎を築いていたようです。

モチベーションの高め方

一流の選手でも、壁にぶち当たるときはもちろんあります。その逆境で心が折れるか折れないかが、とても大切になります。大谷君は「悔しい経験がないと嬉しい経験はできない。」と中学時代の全国大会で負けたことをバネに努力を積み上げました。モチベーションには2種類あります。外的な報酬ではなく、活動そのものから満足感を得られる内発的動機付け。活動から得られる外的な報酬に満足感を得る外発的動機付け。もちろん、大谷君は「負けた悔しさや勝った喜び」を内発的動機付けとし、誰かからの評価(外的報酬)ではなく、よりレベルの高い自分になりたい(内発的動機付け)と考えることができたから、ずっと高いモチベーションを維持することができました。

いつもすごいと思われている大谷君ですが、さすがにプロ1年目は、思うような結果を出すことができませんでした。並みの選手なら、アマチュア時代に特別扱いされていたくらい野球に自信があるのに結果が出ないことに挫折を感じたり、失敗した自分を責めたりすることがあります。しかし、大谷君は、二刀流というチャレンジを伴うことで上手くいかないことに、失敗という悪いイメージを持たず(メディアで賛否があったので普通は失敗に対して落ち込むはず)、成功への挑戦と捉えて常に前向きだったので、モチベーションは落ちなかったようです。

 

羽生結弦編】

自発的に行動するために

プレッシャーを克服するために

 

自発的に行動するために

羽生君の代名詞でもある有言実行について紹介します。14歳で全日本選手権に出場した中学生が「日本人では、荒川静香さんが金メダルを取っているので、僕が日本で二人目の金メダリストになりたい」と発言しているそうです。この時点で、自己肯定感が高いことが分かります。ただ、周囲に大きなことを宣言すると、それに伴ってプレッシャーが掛かります。羽生君は、このプレッシャーをプラスに変えるだけの努力家のようです。努力をしているからこそこの言葉が出たのだと思います。日本人はビッグマウスを嫌う傾向があります。でも、羽生君の人柄もあり、この宣言が未来を作っています。

わが子にも目標を宣言させたい。そのためには、やはり高い自己肯定感をもたせることが大切だと感じました。

羽生君のすごさが伝わってきた内容としてレジリエンスの高さを紹介します。レジリエンスとは、「逆境やトラブル、強いストレスに直面したとき、その状況に適用できる精神力と心理的プロセス」と書かれています。いわゆる、元の力に戻す「復元力」です。誰しもスランプに陥るときがあります。しかし、レジリエンスの高い人は、3つの能力で元に戻すことができるようです。①厳しい環境の変化にも対応できる「適応力」②よくない状況を弾力ある心で受け止める「緩衝力」③逆境やトラブルから素早く立ち直る「回復力」です。この力は、強靭な精神が必要となりますが、困難から逃げず戦うことで培われるようです。

プレッシャーを克服するために

プレッシャーに勝つために絶対に必要なものは練習量です。これがないと何も始まりません。羽生君は、この練習量には、だれにも負けない自信があり、しかも練習を好きでやっているという自負もあったようです。だからこそ、試合前にいつも通りやれば大丈夫という自信が持てたようです。

また、プレッシャーは裏表両面あり、「不安や恐怖」と捉えるとマイナスですが、「集中力や注意力が高まる」と捉えるとプレッシャーをプラスに変えることができます。プレッシャーに慣れることも必要です。場数を踏むことで、不安や恐怖が薄れ、プラスに考えることができるようになるようです。

羽生君はイメージトレーニングを活用した自己暗示が得意なようです。有名な話ですがオリンピックに行く機内ですべてのジャンプが成功し、金メダルを取ることを繰り返しリアルにイメージしていたそうです。本当にメダルを取ったとき以上に、イメトレのときの方が感動したくらいだと話しています。この解像度の高いイメトレを習慣化することで自己暗示を掛け、目標達成している感覚で練習ができるようになるようです。こうなれば練習も楽しいに決まっていますよね。

 

今回の本は、子どもの自己肯定感を高める本でしたが、読んでいるだけで何もしていないのにj自分の自己肯定感が高まってしまいました。ただ、努力のない自己肯定感はただのナルシストになる危険があるので、自分を戒めたいと思います。

ページ数もほどよく、内容はかなり充実している本だと思います。著者は、スポーツ科学の研究者なので、いろいろなデータも紹介されています。今回は二人のアスリートに特化していましたが、いつか、スポーツコーチングの本なども読みたいと思いました。

それでは、次の本でお会いしましょう!!