本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

ゴミ人間 日本中から笑われた夢がある ー 西野 亮廣 著 ー

今回紹介する本の著者は、知名度・人気ともに高い元お笑い芸人?(現経営者?)のキングコング西野亮廣さんです。面白くて、頭が良くて、未来を見通す力があり、よい意味で人たらしな方です。数年前まで好感度低い芸人の扱いを受けていましたが、実力を世間に見せつけ、大成功を収めている方で、私が大尊敬している人です。今回の本もめちゃくちゃ面白くて、すぐに読み切りました。(以前に2回ほど読んでいるんですが)

当然のように紹介したい本でしたが、投稿するのを忘れていたので、改めて内容を紹介していきます。

 

本を短くまとめると「夢を語れば笑われて、行動すればたたかれる現代社会を変える。挑戦者を応援し、より温かい社会にするためには、常識を覆し、自分が新しい常識を提案し世間に認めてもらうんだ」です。

 

本の内容も大事ですが、西野亮廣という人についても紹介したいと思います。今日、紹介するのは、西野亮廣エピソード②「映画えんとつ町のプぺル製作」の2つにします。

 

西野亮廣エピソード

高校を卒業後、吉本興業に入り、キングコングを結成します。このネーミングもダウンタウンなど「ン」がつく芸人が売れやすいというデータから付けたようで、もともとかなりの戦略家です。20歳のころにはバラエティ「はねるのとびら」(30,40代にとってなつかしの番組)が始まり、芸能界で売れっ子になります。その時、タモリさんからの提案で絵を描くようになり、独自の方法を編み出し芸人をしながら、絵本作家になります。このときには、芸能界で頂点を極めることの難しさを実感し、同じフィールドで戦っても勝てない戦いを続けるのではなく、新しい場所を自分が作ってそこで頂点を極めるという発想に変わったようです。

でも、超有名人だった西野さんでも、絵本を書いて売れるのはせいぜい3万部程度。それだけでは、生活もできないただの絵本作家です。このとき、世間は「芸人が調子に乗って絵本を出して失敗した。本業のお笑いをもっとしっかりしろ」とたたかれます。何も知らなかったわたしも、世間の論調に流され、調子に乗っていると思って好感度は低かったです。裏で地道な作業や天才的な戦略を考えていることを知らなかったので、今では後悔しています。

そんな鳴かず飛ばずの絵本製作をしていた西野さんですが、絵本を専門に分けて分業制で書くという世間の常識を覆す独自の方法を編み出します。この背景には、これからネット社会になることを先読みし、ネット上で独自のコミュニティー(オンラインサロン)を立ち上げ、クリエーターなどのコアな見方を付けていたことも重要なポイントです。独自の戦略を駆使し、これまでの絵本ではできなかったクオリティーや製作費によって、全く新しい絵本を製作します。それが「絵本えんとつ町のプぺル」です。本の内容は、読んでいただけると分かりますが、西野さんがこれまで世間から受けていた挑戦への嘲笑を「町からのけ者にされるゴミ人間と少年」という形で表現されています。まだ読まれていない方は、ぜひお読みください。

これまでに、描いてきた絵本の原画を使ってニューヨークで個展を開くことを決めます。ただ、資金が足りません。その時に、資金を集める方法としてやったのが「クラウドファンディング」です。この当時、世間は募金集めのようにとらえ、自分のしたいことを人の金でする詐欺師のような扱いを受けます。「クラファン」は、今ではたくさんの人がやっていて、これまで挑戦をあきらめていた人が挑戦できる素晴らしい仕組みとなりました。「知識不足からくる誹謗中傷」これが人間の進歩を鈍化させていると西野さんは言います。論破、口論が全盛の世の中、かなり進歩が鈍化している証ですね。

もっとたくさん紹介したいことはありますが、この辺にして次に行きます。

 

②「映画えんとつ町のプぺル製作」

世間では、絵本が先で映画が後のような印象を受けている人が多いと思いますが、これは逆で、当時から脚本は完成していたものの資金がたりないなど、まだ映画にはできない状態だったので、将来作る映画の宣伝もかねて、「絵本えんとつ町のプぺル」を出版したというのが本当の順番です。この時点で、「絵本が宣伝のため」という発想に誰も気づいていなかったので、やはり、天才的戦略家だと思います。さらに、その絵本をネット上で全編公開します。これも、やはり、前代未聞のことで世間から激しいバッシングを受けます。未来を予見している西野さんの考えを知って、このあとみんなが手のひらを返したように真似をすることとなります。無料公開も映画に向けての宣伝です。絵本は映画の番宣CMのようなもので、一部だけを切り取って製作されたものです。こう考えると、絵本の無料公開はテレビCMと同じ効果を発揮します。この絵本の続きが見たいと多くの人の関心を引いたのです。「絵本えんとつ町のプぺル」には、準主役の「ブルーノ」は出てきませんし、「異端審問官」という町の風紀を乱すものを捕らえるメッセージ性のある場面もありません。だから、絵本と映画は関連性があるものの全く別の作品として楽しむことができます。未来を予見しながら戦略的に作品を制作しているとは、この本を読むまで考えることができませんでした。また、この戦略があたり100万人以上観客動員し、世界の映画賞にノミネートされるなんて、感動ものです。

もう一つの戦略が、「BBQ型」のマーケティングでコアなファンを獲得しているところです。西野さんの講演会をするときに、一番最初に完売するのが「高い代金を払って一緒にスタッフになれる」チケットです。これは、お客さんとして講演会と関わるのではなく、スタッフになって企画を作り上げることもセットにして販売しているということです。これまでは、レストランのようにお客はただ待っていれば、ご飯が食べれるのが普通でした。でも、BBQ型にすることで、スタッフとして働く自分をSNSにあげたり、文化祭のノリで打ち上げに行ったりして、満足感を高めています。映画のときにも、「子どもを映画館に招待する」ためのクラファンを作り、数千万円の支援を得ることができたそうです。また、スタッフの気分になったコアなファンは、勝手に映画を周りの人に宣伝し、必死で集客を増やそうとボランティアにもかかわらず、本気で映画を勝たせるために動いたようです。これは、プロセスエコノミーのやり方ですね。このようにいろんな戦略やマーケティングを仕掛けた結果、「映画えんとつ町のプぺル」は大ヒットをし、続編も公開されるようです。この時点で、次の映画を見に行くことは、わたしの中で決定しています。

 

今回は、本の内容よりも、西野ウォッチャーであるわたしの、知識が多く入っているかもしれません。本の中には、具体的なエピソードや西野さんの思いがたくさん書かれているので、ブログを見て気になった方は、ぜひ手に取って読んでみてください。どこの図書館でもおいていると思います。

ではまた、次の本でお会いしましょう!!