本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

続「心の基地」はおかあさん ー 平井信義 著 ー

今回ご紹介する本は、30年前に出版された本で、お母さんにながーく読まれているミリオンセラー本です。著者の平井さんは、女子大で何十年と務められ、お母さんやお父さんと子どもの関係を研究されました。大正生まれの方で、一昔前の子育て本かなと思って読んでいましたが、現代にも通じるものを感じました。子どもの個性を生かす子育てをしたい方には、一読してもらいたいおススメ本です。

 

さっそく短くまとめます。

「自立した子どもに育てるために、一番大切にすることは、「意欲」と「思いやり」。子どもを厳しくしつけたり教え込んだりすることで個性が出ずらくなる。子育てで大切なことは観察と見守りだ。」です。

 

①まず「意欲」そして「思いやり」

②子どもの目から見た「よいお父さん」

 

①まず「意欲」そして「思いやり」

人間は、この世に生まれてきたからには、何かの使命をもっているはずです。それを見出すことができれば、個性を最大限に発揮することができます。大人になって個性がない、何のとりえもないと考えるなら、それは、子どものころ周りの大人に個性を発見してもらえず、厳しいしつけで抑圧されていたのかもしれません。個性豊かな子を育てるために大切なことが「意欲」と「思いやり」です。

意欲のない無気力な大人が多くなりニートなどが問題となりました。これは子ども時代に家庭や学校などの大人に抑圧され、意欲が低下していたことが影響しています。「意欲」の盛んな子に育てるためにはどうすればよいのでしょうか?それは、「いたずら・反抗・けんか・ふざけ」といった、しつけとして普通の大人が叱ることを、認めてあげることです。これらを認めてもらえた子どもは、「自発性」が発達します。大人から見れば落ち着きのない行動も、子どもから見れば「好奇心」と「自己実現」であり、この経験をした子どもは、なんでもやりたいという「意欲」が高まります。要するに、「いたずら・反抗・けんか・ふざけ」は意欲を高めるトレーニングなんです。ただ、この4つは、やりすぎるといけないこともあります。大人はこれらをすぐに叱って止めるのではなく、観察し見守りながらやらせてみて、いけなかったことをフィードバックすることも大切です。「意欲」を高めるために最重要なのは「遊び」です。子どもは次々に「遊び」を考えだします。この時の遊びは、楽しみたいという課題を自ら立て、その遊びを実践してみる。そして楽しめなかったときは修正する。という「自己実現」のサイクルを意欲的にしています。この遊びを止めることは、「自己実現力」の発達を阻害していることになります。

先ほども書きましたが「いたずら・反抗・けんか・ふざけ」は好奇心の塊です。この欲求を満たすために行き過ぎることもあります。大人は、行き過ぎるといじめなどに発展することを経験上知っているので、事前に止めようとしてしまいます。でも、これらの好奇心からくる欲求を満たせるように、大人に見守られて育った子どもは、自分からやりすぎに気付くようになります。なぜなら、やりすぎると相手を傷付けることを経験するからです。こうすれば、自発的に「思いやり」について考えるようになり、相手の立場に立って相手の気持ちを汲む能力を高めていくことができます。

 

②子どもの目から見た「よいお父さん」

最近、子育てに参加するお父さんが増えています。昔のかみなりおやじは減り、優しく子どもと関わるお父さんを公園でよく見かけます。これは、子育てにとってとてもよいことです。なぜなら、かみなりおやじのように抑圧的な人間は自分を棚に上げて正論を伝えます。子どもは、お父さんのできてない面をちゃんと見ているので、そんな人からの正論は、カタチ上やってるように見せるだけで、心では反抗しています。これでは「意欲」や「思いやり」は発達しません。また、子育てをお母さんに任せっきりにしていると、お母さんのコントロールが効かなくなったときに、子どもが奔放になり最終的には子育てが放任になります。このままだと情緒が育たず、冷たい心になったり非行に走ったりします。

お父さんに大切なことは、子どもと過ごす時間を大切にし、楽しい思い出を一緒に作ることです。そうすれば、子どもから慕われるようになります。仕事で忙しいお父さんが一生懸命自分たちのために時間を作ってくれていることが子どもに伝われば、尊敬の目で見るようになります。関わる時間が持てず、物だけを買い与えてしまうのは要注意です。心の交流が持てず、子どもの心が育っていないので、要求だけが高まってしまいます。

お父さんに大切なことは、まず外で一緒に遊ぶことです。このときに、キャッチボールなど運動をして子どもと関わると、子どもができないことをするスーパーマンのように尊敬の心をもちます。また、よく笑うことも大切です。特に、思春期になった子どもたちは、親から関わりをもとうとしない限り、どんどん心が離れてしまいます。そんなときに、笑顔で「おはよう」というだけで、子どもは態度には出しませんが心の安定につながります。

お父さんが権力を振りかざして封建的にいばる時代は終わりました。未だに、このような古い考えのお父さんが家にいると、家庭の雰囲気は最悪なものになってしまいます。いくらお母さんが明るく頑張っても、お父さんがいる限りこの雰囲気は変わりません。そして、このようなお父さんは、年を取り体力や経済力が減っていくに従って、相手にされなくなります。そのときに気付いたとしてもこれまでの数十年の怨念は消えることはないかもしれません。このご時世、お父さんこそ、子育てについて真剣に勉強し、家庭を明るくしてほしいと思います。

 

最後は、自分の思いがあふれてしまいましたが、子どもを「意欲」や「思いやり」があって、自立できる子に育てるのは親の役割だと思います。未来ある子どもを、お父さんとお母さんが協力して育てていく社会になってほしいと心から願っています。そのためにも、本を読んで私が感じたことを伝えていきたいと思います。

では、次の本でお会いしましょう!!