本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

グーグル、ディズニーよりも働きたい「教室」 ー 松田 悠介 著 ー

今回は、図書館でたまたま見付けました。タイトルのインパクトがすごくて、気になったので借りてみました。タイトル通り、すごく興味深い内容でした。教師をしている私としては、数十年前と変わらない学校現場を経験しているので、著者の思いが痛いほど伝わってきました。あっという間に読んでしまい、学校関係者の方は、特に納得の内容だし、素晴らしい取り組みがあるという発見になりました。

著者を紹介します。松田さんは、大学を卒業後、私立中学の体育教師となり陸上部の顧問も任され、希望通りの教員人生をスタートします。しかし、学校現場に入って感じたことは、教師の重労働や変化を好まない職場の雰囲気でした。そこで、本当の教育を学びなおそうとハーバード大学大学院の受験を志し、苦労の末、奇跡的に入学を認められます。奇跡の原動力となったのは、日本の教育を変えたいという夢でした。夢をもって渡米した松田さんは、これも奇跡的に学校運営の変革を行おうとしているNPO団体「TFA(ティーチ フォー アメリカ)」を知り、研究を始めます。そして、大学院終了後、この活動を日本にも広めることを夢見て、悪戦苦闘をします。

この本には、「TFJ(ティーチ フォー ジャパン)」を創設し、軌道に乗せるまでの松田さんの経験が書かれています。それでは、本の紹介に移ります。

 

まずは、内容を短くまとめます。

「夢を実現するには、自分の思いを誰かに伝え続ける。そして、あきらめずに活動を続けていくことで、共感してくれる人が増える。同じ目的をもった仲間が増えることが何よりの喜びだ。」です。

 

アメリカではグーグル、ディズニーよりなりたい職業「教師」

②組織を動かすための戦略

 

アメリカではグーグル、ディズニーよりなりたい職業「教師」

日本では、今、教師の過重労働が問題になっている。小学校教師の私も、以前は教育困難校に勤め、部活担当などもしていたので、毎日12時間以上職場にいた。しかも、すべてサービス残業。以前は聖職のようにされていた教師も、子どもや親からの信頼は薄れ、頑張った分だけ報われるということが無くなってきた。頑張っても、子どもは暴れ親からは時間を気にせずクレームが来る。ということも経験し、過重労働をした結果、心が壊れかけたこともあった。教師を辞めようと思ったこともあるし、やりがいのない仕事だと思ったこともあった。

しかし、アメリカでは教師は、未だに人気の職業とされている。特に、独自の研修を受けて現場で教えるプログラムを推進する「TFA」というNPO団体は全米の人気就職先人気NO.1になったこともある。なぜ、そんなに人気が高いのだろうか。それは、教師はリーダシップが必要な仕事で、集団を引っ張て行くだけではなく、目標の設定、共有して学級集団を高める経験が、すぐにできるからだ。また、未来ある子どもたちに影響を与えることができるのでやりがいもあるからだ。そして、これらの経験は自己成長につながり短期間で自分の可能性を広げることができる。教師は、一年目から担任をもつことが多い。なので、学級のリーダーとなる。これは、いきなりベテランと同じ仕事を任されるということなので、一般企業のような雑用や研修期間がほとんどない。さらに、その学級の裁量権は担任にある。要するに、自分で起こした企業(学級)の社長の立場になる。また、一般企業で言えば、プロジェクトを任されたリーダーにいきなりなるようなものだ。

教師の実務を通して身に付く力は、①リーダーシップ、②コミュニケーション能力、③課題解決力である。①リーダーシップでは、学級に足りないものを考え子どもたちの半歩先を照らし、自立性を引き出さなければならない。ワンマンで子どもたちを引っ張るだけでは、子どもたちに将来必要となる力を身に付けることができない。②コミュニケーション能力では、生徒指導、保護者対応、同僚との関係構築など多岐にわたる。大人を信じていない子どもも多く、まずは、信頼関係を構築するために、相手に寄り添う質の高いコミュニケーションが必要となる。また、「勉強っておもしろい」と感じさせるためには話術も必要となる。③問題解決力は、個性の違う子どもたちに対応するためには一人一人と向き合い課題を見付け柔軟な発想で解決策を探さなければいけない。要は、マニュアルがなく自分で答えを見付けなければ子どもたちに良い影響を与える教師にはなれない。

アメリカでは「TFA」で2年間教師を経験し、自己成長させてから一般企業に入るという流れが多い。日本も終身雇用が無くなり、能力がなければ理想の仕事には就けない未来が待っている。本気で教師をすれば、短期間でスキルアップができるすばらしい仕事なのだ。

 

②組織を動かすための戦略

松田さんは、大学院卒業後、一度母校の教師となった。しかし、「教育を改革する」という夢を実現させるため、コンサル会社を経験した後、「TFJ」というNPO団体を作った。様々な経験をしている著者が使った戦略が紹介されている。

「TFJ」は利益目的ではないため、企業に比べると給料が安い。しかし、能力のある人がこれまでの給料を捨て、教師になる。なぜだろう。これは、「TFJ」が描くビジョンに共感しているからだ。未来ある子どもたちが質の高い教育を受け、貧富の差がない社会を目ざすことがモチベーションとなる。また、最近では、お金や社会的地位による報酬ではなく、自己成長を後押ししたり、「達成感」「仲間意識」をモチベーションとする人が増えてきている。

「TFJ」が進める教育改革は、はっきりしたビジョンを出し、そのビジョンに共感する人たちに働きかける。まず、良い人材を集める。そして、その人たちが教師という仕事をする中で、自己成長できるようなプログラムを提供する。共通の夢をもった仲間と、同じ思いをもって学校現場で働くことで、「達成感」を感じ、「仲間意識」を高めることができる。やりがいをもって働く教師に教わる子どもたちは、質の高い教育を受けることができ、明るい未来が待っている。

 

「TMJ」は、こんな社会を作る活動をしているにもかかわらず、私は、公務員教師をして、ぬるま湯の中で、給料のために働いていることを恥ずかしく思いました。これからは、もっと気合いを入れて教師をやっていこうという気になりました。

では、次の本でお会いしましょう!!