本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

子どもの逆境に負けない力「レジリエンス」を育てる本 ー 足立 啓美 鈴木 水季 共著 ー

今回、紹介する本は、ブログの中にも何度も登場する「レジリエンス」が表紙にデカデカと載っている本だったので、ビビッときてすぐに手に取りました。「レジリエンス」は、今話題のプロスポーツ選手やビジネスの大物も大切にしている力です。

でも、学校現場では、「レジリエンス」という言葉を聞いたことがないという先生がいますし、子育て中の親御さんも初耳だという人が多いと思います。「メンタルを強くすることが大切」ということは多くの人が知っています。わたしは「メンタルを強くする」のに何よりも大切なことが「レジリエンス教育」だと、この本を読んで確信しました。あらゆるジャンルの方々に「レジリエンス」を知ってもらいたいという意気込みでお伝えしたいと思います。

 

最初に、まとめです。

「変化の激しい時代に生きる子どもたちは、困難を乗り越え、自分の生き方を選択する力が必要。出来事は変えられなくても、出来事に対する態度を変えることでメンタルを強くする。それがレジリエンス教育だ!」です。

 

レジリエンスとは

レジリエンスを育てる

レジリエンスのトレーニン

 

レジリエンスとは

レジリエンスを定義づけすると、「人生において困難や逆境に遭ったときでも、その状況に耐え、そこから回復する力」となります。レジリエンスは、ポジティブ心理学として1980年ごろから研究された、最近のものです。「折れない心・強い心」といった持ち前のメンタルではなく、「落ち込んでも立ち直れるしなやかな心」です。だから、私は性格がネガティブだから無理というのではなく、そんな人でもトレーニングすることでつけることができる力です。レジリエンスを鍛えることは、幸せになるためにとても重要です。子どもたちが幸せの道を歩むためには「自律・自立」が必要です。レジリエンス教育をすることで、この2つの「じりつ」の力が育ち、自分が大切にしたい価値観やあり方を尊重し、自分にとって重要な他者とのつながりを大切にして、豊かな人生を生きる力を育むことができます。

 

レジリエンスを育てる

レジリエンスを育てる第一歩は、自分の気持ちと仲良くなることです。今の自分はどんな気持ちなのかに気付くことから始まります。そして、自分の気持ちは、どんな時にどうなるか、どんな傾向があるかなど知識として知ることができるようにしていきます。子どもたちは、感情の語彙が少なく「むかつく・うざい」や「うれしい・楽しい」だけで表現することがあります。そんなときは、大人が他のどんな感情の言葉に変換できるか一緒に考え、手伝っていく必要があります。また、単純に感情の言葉を増やすワークなども有効です。

子どもたちは、これまでの様々な経験から「失敗をこわがる」ことが多いです。これは、失敗に対してネガティブに捉える癖がついているからです。でも、このネガティブな感情に慣れておかないと、落ち込む前段階で止めてしまい、そこから復活するレジリエンスを鍛えるチャンスも無くなります。だから、大人は子どもたちがチャレンジできる場を作り、失敗を経験できるようにしなければいけません。

ネガティブ感情は持続しやすく、体や心に悪影響を与えるので負のスパイラルを起こしやすいという特徴があります。ネガティブは、古代から人間にある生き延びるための感情です。生きるために「恐怖を感じると逃げる、怒りを感じると戦う」というDNAが残っているのです。ネガティブは仕方がないにもかかわらず、ネガティブを受け入れることができないと自分を責めてしまい、どんどん泥沼にはまってしまいます。

こうならないために、ネガティブな自分を認め、「自分自身を責めずに思いやる」セルフコンパッションという力も大切です。この力には、①幸福度を高める②ストレスを軽減させる③レジリエンスを高めるという3つの効用があります。セルフコンパッションもワークなどをすることで高めることができます。

 

レジリエンスのトレーニン

4つの心の筋肉を鍛えると内面的な強さ、自己責任能力、自立心、自制心などが身に付きます。これは、体の筋肉と同じなので、鍛えれば強くなり鍛えなければ衰えます。ただ、体の筋肉と違って目に見えません。本の中にはレジリエンス筋肉のチェック表もあります。

4つの筋肉の1つ目は、「自己肯定感を高める」です。自己肯定感とは、長所も短所も両方ある自分を認め、そこに価値があると思える感覚のことです。自己肯定感を高めるための第一歩は、自分を知ることです。自分の長所・短所を認識して、自分への理解を深めます。その中で、自分の性格的な長所を知ることが、自己肯定感を高めることにつながります。本の中では性格的な強みを24個に分類されています。ここを見ながら考えるだけで自分の性格への理解が深まりました。

2つ目は、「ポジティブ感情を増やす」です。ポジティブ感情は、人生を豊かにする思考や行動につながり、心と体のエネルギーをアップしさせてくれます。普通の人は、基本的にネガティブ感情の方が多く持続し、ポジティブ感情の方が少なく忘れやすい特徴があります。そこで、ポジティブ感情を増やすために、自分の好きなことを思い切りする・感謝する・笑顔になるなどを意識することが必要です。無理にでもやって、気持ちよかった感情を積み上げることで、自然とポジティブに近づいていきます。また、出来事をポジティブに捉えるよう意識します。例えば、「雨降り」は「濡れるからいや」と捉えればネガティブですが、「植物にとっては恵みの雨。農家さんが喜ぶ」と捉えればポジティブとなります。このように、出来事を客観的に2つの面から捉え、ポジティブを選ぶ練習をしましょう。

3つ目は、「自己効力感を高める」です。「自分にはできない」と思うのではなく、「きっとうまくいく」と思える信念をもつことが大切です。この筋肉を鍛えるためには、達成体験や成功体験が必要です。何かにチャレンジして、できるようになる体験を増やしていきます。難しいことから始めるのではなく、簡単な習慣作りなどから始めましょう。まず、できたことを自分自身で認め褒めてあげましょう。そして、周りの人はできるようになったことを認めてもらったら素直に喜びましょう。

4つ目は、「心を支えてくれる人の存在」です。家族や友達との絆があることが大切です。家族との時間は、子どもにとって重要で、「自分の居場所がある」「自分らしさを認めてくれる」といった家族との絆があれば、この力は高まります。家族から支えられた経験は、誰かを支えたいという感情につながります。そして、他者へ共感することができるようになり、友達との絆も深めることができるようになります。さらに、感謝する心や相手をゆるす心も育むことができ、コミュニケーションを円滑に取ることができるようになります。

 

とても大切なことが多くて、長くなってしまいましたが、子育てをする中で、レジリエンスを意識することは必要不可欠だと感じました。これから大人になっていく子どもたちが「自律・自立」して、幸せになるために、レジリエンス教育を広げたいと思います。それでは、次の本でお会いしましょう!!