本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

現代語訳 学問のすすめ  ー 河野英太郎 著 ー

夏休みに入り時間に余裕ができるので、私にとって「読書の夏」がやってきました。読んだ本をなるべくたくさんブログにあげ、みなさんにお伝えするとともに、アウトプットして本の内容を自分のものにしようと思います。

今日ご紹介する本は、日本人なら一度は聞いたことがある「学問のすすめ」です。勝手に日本文学のように思っていて、敷居が高く読もうと思いませんでしたが、図書館で何となく手にしたら、思っていたものと全然違い明治時代の「ビジネス書」だということが分かりました。さらに、現代語訳なので、かなり読みやすくなっています。著者は、日本IBMで様々なリーダーをし、ビジネス書を書いている方なので、仕事に生かせるコツなども入っていておススメ本です。

それでは、内容を短くまとめると、

「人は生まれながらにして平等である。仕事ができる人とできない人の違いは、学んだか学んでいないかで決まる。」です。

 

①全員が当事者意識をもつ組織は強い

②学んだら行動に移す

③人の自由を奪わない

 

①全員が当事者意識をもつ組織は強い

100年ほど前、明治時代に書かれた「学問のすすめ」は開国して明治維新が起こった激動の時代です。専制主義から民主主義に移行する時なので、国民一人一人の独立意識を啓発しています。そのために、学びの重要性が書かれているのが本書です。「独立」とは、自分で考え自分の行動に責任をもち、他人に頼らないことです。国が「支配する側」と「支配される側」に分かれてしまうと、国民は「支配される側」となり、当事者意識が低く、国を良くしようという責任感ももてません。例として、今川VS織田の桶狭間の戦いが紹介されています。2万以上の軍をもつ今川が、2千ほどの軍の織田に負けた戦いです。この要因として、今川の国民がリーダーである今川義元に頼りきりで、自分たちで考えて行動せず、織田は少数ながらリーダーを中心に策を練り固めたことです。みんなが学ぶことで策を出し合い、勝利に結びつける。これが強い組織になると書かれています。

最近では、ウクライナの国民が侵略戦争に対して、対抗して圧倒的な力の差がありながら善戦しています。日本は、アメリカに守られていると思っているのか、選挙ですら投票率が50%を切ります。国民が当事者意識を失っているだけでなく、強いリーダーも生まれない。国力が下がっているにもかかわらず、国民は危機意識がなく学ぶことにも消極的。力があって学んでいる実力者が海外に仕事を求める。福沢諭吉が、この時代にいたら、この状態に危機感を感じ、打破するような本を出していたと思いました。

 

②学んだら行動に移す

この本では、「本を読むだけが学びではない」と強く訴えています。知っているだけで使えていないと意味がないということです。文献などで知識を得て、頭や心の使い方も学んで、その学びを誰かのために生かして初めて価値ある学問となります。本当に「学問している人」は観察、推論、読書によって情報や知見を集めたら、これを議論を通じて交換し、論文や演説を通じて広く世の中に知見を広めている人だと書かれています。内面は思慮深く、外面は人と快活に接する。両方を使った「学び人」になることを提唱しています。ジャーナリストのように正しいことを発言していても、実行する力がないから理解はできても納得できない状態にならないようにすることが大切です。人の考えや行動を価値あるものにするためには、様々な状況を比較検討し、いいほう、レベルの高いほうに向かい続けること、そのとき、決して満現状に足しないことが大切だと書かれています。現代社会は、明治時代と違って情報や知見はその場でネット検索できます。それで済ますのではなく、それをどう生かすことができるか、どうやったら貢献できるかを考えて、先人を超す力を発揮しようとする気概が大切です。

 

③人の自由を奪わない

人間で一番厄介な感情が「恨み」です。他人と比べ自分が劣っているところを見付け、自分の力のなさを棚に上げて他人に多くを求めます。それを恨みとして持った人が、不満を解消するために、自分が得することではなく他人を損させることを考えます。人の脚を引っ張る人ばかりの社会や組織は、発展するはずがありません。そんなことは、考えればすぐわかるにもかかわらず、自分の負の感情をコントロールできない。こうなれば、世の中全体の幸福の量は減り、生きづらくなるのは当然です。子どもたちは、こんな汚い大人の世界を垣間見ることで、「大人になりたくない、仕事はつらくやりたくない」とネガティブ感情を高めます。自分の行動をしっかりと見直し、周りへの影響も考えてコントロールする力をつける必要があります。派閥や自分の利益ばかりを意識する組織は、自由がなく言動や行動を束縛されます。そうなると、戦いが生まれ行き詰まり感が出ます。そしてまた、恨みが生まれる悪循環に陥ります。組織には何を話しても大丈夫なオープンなコミュニケーションが必要なはずです。そのために、恨みを生まない安心な組織を作る必要があります。人は、もともと意見が違って当たり前。話し合って意見をすり合わせる中で、新しい考えが生まれるはずです。

 

今日はこの辺りで終わりにしたいと思います。140年前も現在も、こんなに文明は発達しているのに、人間の負の部分が変わっていないことは問題だと思います。みんなが学び、もっと生きやすい組織や社会を作ることをこの本は提案しているのだと思います。

それでは、次の本でお会いしましょう。