本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

16歳の仕事塾 ー 堀部伸二・山岸慎司 著 ー

今回ご紹介する本は、中高生向けに書かれた本です。わたしがなぜ、この本を選んだかというと、小学校教師であるわたしは、教え子が卒業するとその後の子どもたちの人生に関わる機会は少なくなります。でも、子どもたちは、思春期である中高生のときに人間関係や進路について一番悩みます。そして、そこに答えを見つけることができず、自らを傷つけてしまう痛ましい事件が起こります。最悪なことが起こらないためにも、子どもたちは未来に多くの希望をもってほしい。そのために、重要なことがキャリア教育だと考えました。中高生のときに、自分の夢をもちそこに向かってがんばれる、強い心を育てるヒントがこの本に書かれていました。すごく勉強になった1冊なので、おススメです。

それでは、まとまからいきます。

「これからの変化が激しい時代を生き抜く子どもたちには、主体的にありたい自分を見つけることが大切。そのために、しっかりしたキャリア教育が必要だ」です。

 

①高校生から考えるキャリアデザイン

②高校生が自分でキャリアを考えるために

 

①高校生から考えるキャリアデザイン

この本は、中高生向けなので説明が具体的で分かりやすいのが特徴です。冒頭に出される例が面白く、分かりやすかったので紹介します。昭和の国民的漫画「サザエさん」から時代背景を説明しています。波平さんは54歳の設定で、当時の定年は55歳、男性の平均寿命は69歳です。なので、波平さんは初老のお爺さんのイメージが強いです。でも今の54歳は、会社で重要なポジションを担い、バリバリ働く元気なおじさんというイメージがあります(個人差はありますが)。ということは、たった50年近くで世の中はガラッと変わっています。今では、人生100年時代とたり、年金に頼らずに自分がキャリアを積み上げていつまででも働くことができます。年代にあった仕事を選び、転職するのが当たり前の時代となりました。

でも、中高生にアドバイスする親や教師は、未だにサザエさん時代の人が多く、「大手企業や公務員なら人生安泰。学歴があれば幸せになれる」と考える人が少なくありません。そんな人からのアドバイスを真に受けて社会に出て、その時に「話が違うぞ。学生時代に頑張ったことが社会では通用しない」とならないように、自分でキャリアについて学び考え、誰からどんなアドバイスをもらうかが重要になります。

キャリアとは、もともと「車などの轍」を意味し、今では「職歴」、広い意味では「人が生涯行う労働と余暇の全体(人生そのもの)」と言われ、とても大事なことです。マズローの5段階欲求でいうところの「自己実現欲求」を満たし、なりたい自分になっていくことでもあります。今の時代「なりたい自分」になるためには、自分に適した仕事を見付け、キャリアアップしていく必要があり、1つの会社で馬車馬のように働く時代ではありません。キャリアを考えることは、自分の幸せを考えることに直結しています。

 

②高校生が自分でキャリアを考えるために

わたしは高校時代、自分のキャリア(将来)はボッーと考えるだけで部活に明け暮れていました。当然、大学は学力的に入れるところ、どうせサラリーマンになるなら経営学部でいいかというくらいにしか考えていませんでした。その結果、大学生時代は授業はそっちのけで、友人関係・バイト・部活のことしか考えていませんでした。でも、20年前の大学生のほとんどがこの状態。就活のときにやっと、人生を考え、会社選びをする。だから、やりたい仕事でなく、採用をもらった会社に就職。就職して壁にぶち当たり、初めて自分のキャリアについて考える。そして、遠回りした後、教師になる。わたしの場合は、25歳のときにはじめてキャリアを考え、やっと最近になって、本当に自分のしたいことが見えてきました。だから、そこに向かって学ぶことが楽しくてたまりません。「学生時代にキャリアについて気付けていれば・・・」と考えてしまいます。

わたしのことは置いといて、まず、学びについて伝えます。内発的学び(今のわたし)と外発的学び(学生時代のわたし)があります。「内発的学び」はどんな自分になりたいかがあり、その自分になるために主体的に学ぶことです。「外発的学び」は、義務教育のように誰かから言われたり、なんとなく学んでおこうというビジョンの薄い学びです。キャリアを考えるためには、内発的学びが重要となります。この学びは一生継続することができ、これからの時代でとても大切なことです。日本は、大学受験などの外発的学びに疲弊し、学ぶことをネガティブに考えて、大人になってから学ばない人が多いと言われています。

わたしの就活時代(20年前)、社会人として必要なスキルとして重要なものは「協調性」「誠実性」でした。しかし今は、「コミュニケーション能力」「主体性」に変わっています。また、社会人基礎力として会社で求められる力は、大きく分けて「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つです。この力は、義務教育では教えてくれませんし、学生時代につけることも難しいです。社会人となり壁にぶち当たり、何とかしたいという思い(内発的学び)をもって初めてつく力だと思います。

内発的学びによってキャリアを真剣に考え、チャンスをつかむためにには、「好奇心・持続心・柔軟性・楽観性・冒険心」の5つの心構えが必要です。また、自分の好きなことから発想を広げ、そこに関係のある仕事を見付ければ、自然と「もっと知りたい」となり、学びに向かうことができます。

高校生からキャリアについて考えるためには、まず、自分の好きなことや夢を真剣に考え、それを実現するためにはどんな学びが必要かを考えて、5つの心構えを意識して学びを深めることが大切です。難しいことですが、キャリアについて考えることができるようになれば、自然とアドバイスをもらえる人が変わります。親や教師のアドバイスを信じて失敗するということも少なくなると思います。

 

冒頭に書いたように、わたしの本当にしたいことは、「思春期に苦しみ自分を傷つけるのではなく、早い段階で子どもたちが自分のキャリアについて考え、仕事や趣味を生きがいにして、人生を楽しみ幸せになるお手伝いをしたい」ということです。ICTが発達し、便利な社会になっているのに幸福度が上がらないのは、「なりたい自分」がはっきりせず、自己実現に向けての内発的学びが足りないことが原因の一つだと思います。わたしも、まだ、妄想の段階ですが、本を読み発信していくことから始めています。何かのヒントになれば幸いです。それでは、次の本でお会いしましょう!!