本好き教師の読書感想文

現役小学校教師がおすすめ本を紹介しています!

才能の正体 ー 坪田 信貴 著 ー

2学期に入り何かと忙しく、本は読んでいるもののあまりいい本に出会えなくて、投稿をサボってしまいました。しかし、自信をもっておススメできる本に出会いました。それが今回紹介する本です。著者は、ビリギャルで有名になり、いまではメディア出演や講演会などで大活躍の坪田信貴さんです。塾の経営やチームビルディングの研修などの経験と、塾生や雇用者のコーチングから得た実体験が詰まった本で、とてもわかりやすく一気に読めました。おススメです。

 

それではさっそくまとめます。

「才能は誰にでもある。自分のとがったところ(得意分野)を見付け、自分の才能はすばらしい力だと信じる。未来は過去の延長線にあるのではなく、自分の才能を信じ自分で未来を作り出そう」です。

①才能とは何か

②能力を才能に変えるマネジメント

 

 

①才能とは何か

「才能=能力」ではありません。「能力」は基本を教わりコツコツと努力を続ければ誰でも身に付けることができる力です。この「能力」が高まっていくと、人よりも得意な部分ができて、やがてそこが「才能」として認められるようになります。ということは、才能は生まれ持って限られた人にだけ与えられた能力ではないんです。ただ、「才能がある」と言われている人たちは、その人に合った動機付けがあり、正しいやり方でコツコツと努力を積み上げる力をもっています。

勉強ができる子は「やる気」がある。勉強ができない子は「やる気」がない。というふうに「やる気」は都合よく前向きな時にだけ使うことが多いですが、「やる気」=「動機付け」です。だから、ゲームに夢中な子は、ゲームに対するやる気が満々です。ゲームをクリアしたいなど明確な動機付けがあります。ということは、勉強ができない子は、勉強への動機付けが無いだけです。いかに動機付けするかは、親・教師のやり方しだいとなり、本人だけの責任では決してありません。「動機付け」には手順があり、まず、「これは自分の役に立つ。これならできそう。」と物事に見通しをもつことで、物事を正しく「認知」します。次に、「これはできるようになりたい。できるようになったら楽しそう」と物事を捉え、テンションが上がることで「情動」が動きます。そして、「やってみて、やっぱりこれがやりたい」と安定した心理エネルギーの中で「欲求」をもちます。この「認知・情動・欲求」により、パワーのある動機付けになり、継続して努力を続けることができるようになります。

しっかりとした「動機付け」を本人が持てば、その後は、本人の努力次第で能力を才能に変えていくことができます。自分の成長を実感していれば努力を続けることはできるはずです。しかし、努力しても結果が伸びないスランプが来ます。この時に「人のせい」にしてしまうと才能の芽は枯れてしまいます。だからこそ、最終的に「才能」は自分の中にしかないのです。

 

②能力を才能に変えるマネジメント

誰もが持っている能力をどのように伸ばせば、才能ある突出した能力になっていくのでしょうか。ここで大事なキーワードが「守破離」です。これは、剣道などの修行におけるスキルの段階で、「守」は師の教えを確実に身に付けること、「破」は他の師の教えも学び、良いものを取り入れて発展させること、「離」は独自の新しいものを生み出すことです。ここで一番大切なのが「守」です。この人みたいになりたい(師)を見付けたら徹底的にパクる(真似する)ことです。師の言動よりも行動を完コピします。完コピできるまでは、オリジナリティーを入れてはいけません。これをしてしまうと身に付くまでに自分の型にはまってしまって結果が出ません。完コピをする中で、少し違うやり方が自分にはやりやすいと分かってこれば、別の人のアドバイスも聞けるようになり「破」へと向かって行きます。

次は「師」が「生徒」の才能を伸ばす方法について説明します。「師」が最初にすべきことは、目に浮かぶような具体的なビジョンを提示することです。人は、具体的なイメージを最初に提示すると、そこをゴールとして、そこまでの道筋を見つけ出そうと考え始めます。ビジョンに対して、「面白そう。やってみたい。」となった後は、何をするか言葉でアウトプットさせます。言葉にすることで感情が動き、ビジョンが自分の進むべき正しい道となって心に残ります。アウトプットを繰り返すことで、最初は無理だと思っていたことでも、自分の言葉に対してできると信じられるようになります。このように「師」と「生徒」は、お互いの期待に応え合うことで信頼関係を築き、この関係は能力を発揮するためにも非常に重要です。しかし、途中で期待からずれてしまうと「裏切られた」となり、信頼関係はあっけなく崩れてしまいます。信頼関係ができた後は、短時間でいいので会って話す回数を増やします。このコミュニケーションの中でお互いが約束をします。これは上下の立場関係なくお互いが守らなければなりません。

信頼関係が完成したら、次は出来事や結果に対して、「師」がフィードバックをします。この時、マイナス点を指摘するのではなく、客観的事実をフィードバックします。例えば、姿勢が悪く背筋が伸びていない場合「姿勢が悪いよ。姿勢を正しなさい」ではなく、「姿勢が曲がっているね」とただ事実だけを伝えます。すると、自分から姿勢を正すようになります。上司が部下に対して、自分の価値観に沿ったフィードバックをしてしまうと、部下とのそりが合わなくなり関係が悪くなります。フィードバックしたことに対してすぐ結果を求めるのではなく、事実を繰り返し伝え自分で気付く力をつけることが大切です。自分で気付く(メタ認知)ことができるようになれば、自分自身で客観的事実をフィードバックでき自分で能力を高めていけるようになります。またこの時、部下にポジティブなフィードバックができるような声掛けも大切になります。

 

今回は、才能についての紹介から、最後は部下を育てるコーチングの話に発展しました。すごく分かりやすく手順も明確に説明されているので、まずは、本の内容を理解し坪田式をコピーしていきたいと思います。この本に書かれていることは、人に何か教える機会があれば使っていただきたいテクニックです。ぜひとも、参考にしてみてください。では、次の本でお会いしましょう!!

子どもの逆境に負けない力「レジリエンス」を育てる本 ー 足立 啓美 鈴木 水季 共著 ー

今回、紹介する本は、ブログの中にも何度も登場する「レジリエンス」が表紙にデカデカと載っている本だったので、ビビッときてすぐに手に取りました。「レジリエンス」は、今話題のプロスポーツ選手やビジネスの大物も大切にしている力です。

でも、学校現場では、「レジリエンス」という言葉を聞いたことがないという先生がいますし、子育て中の親御さんも初耳だという人が多いと思います。「メンタルを強くすることが大切」ということは多くの人が知っています。わたしは「メンタルを強くする」のに何よりも大切なことが「レジリエンス教育」だと、この本を読んで確信しました。あらゆるジャンルの方々に「レジリエンス」を知ってもらいたいという意気込みでお伝えしたいと思います。

 

最初に、まとめです。

「変化の激しい時代に生きる子どもたちは、困難を乗り越え、自分の生き方を選択する力が必要。出来事は変えられなくても、出来事に対する態度を変えることでメンタルを強くする。それがレジリエンス教育だ!」です。

 

レジリエンスとは

レジリエンスを育てる

レジリエンスのトレーニン

 

レジリエンスとは

レジリエンスを定義づけすると、「人生において困難や逆境に遭ったときでも、その状況に耐え、そこから回復する力」となります。レジリエンスは、ポジティブ心理学として1980年ごろから研究された、最近のものです。「折れない心・強い心」といった持ち前のメンタルではなく、「落ち込んでも立ち直れるしなやかな心」です。だから、私は性格がネガティブだから無理というのではなく、そんな人でもトレーニングすることでつけることができる力です。レジリエンスを鍛えることは、幸せになるためにとても重要です。子どもたちが幸せの道を歩むためには「自律・自立」が必要です。レジリエンス教育をすることで、この2つの「じりつ」の力が育ち、自分が大切にしたい価値観やあり方を尊重し、自分にとって重要な他者とのつながりを大切にして、豊かな人生を生きる力を育むことができます。

 

レジリエンスを育てる

レジリエンスを育てる第一歩は、自分の気持ちと仲良くなることです。今の自分はどんな気持ちなのかに気付くことから始まります。そして、自分の気持ちは、どんな時にどうなるか、どんな傾向があるかなど知識として知ることができるようにしていきます。子どもたちは、感情の語彙が少なく「むかつく・うざい」や「うれしい・楽しい」だけで表現することがあります。そんなときは、大人が他のどんな感情の言葉に変換できるか一緒に考え、手伝っていく必要があります。また、単純に感情の言葉を増やすワークなども有効です。

子どもたちは、これまでの様々な経験から「失敗をこわがる」ことが多いです。これは、失敗に対してネガティブに捉える癖がついているからです。でも、このネガティブな感情に慣れておかないと、落ち込む前段階で止めてしまい、そこから復活するレジリエンスを鍛えるチャンスも無くなります。だから、大人は子どもたちがチャレンジできる場を作り、失敗を経験できるようにしなければいけません。

ネガティブ感情は持続しやすく、体や心に悪影響を与えるので負のスパイラルを起こしやすいという特徴があります。ネガティブは、古代から人間にある生き延びるための感情です。生きるために「恐怖を感じると逃げる、怒りを感じると戦う」というDNAが残っているのです。ネガティブは仕方がないにもかかわらず、ネガティブを受け入れることができないと自分を責めてしまい、どんどん泥沼にはまってしまいます。

こうならないために、ネガティブな自分を認め、「自分自身を責めずに思いやる」セルフコンパッションという力も大切です。この力には、①幸福度を高める②ストレスを軽減させる③レジリエンスを高めるという3つの効用があります。セルフコンパッションもワークなどをすることで高めることができます。

 

レジリエンスのトレーニン

4つの心の筋肉を鍛えると内面的な強さ、自己責任能力、自立心、自制心などが身に付きます。これは、体の筋肉と同じなので、鍛えれば強くなり鍛えなければ衰えます。ただ、体の筋肉と違って目に見えません。本の中にはレジリエンス筋肉のチェック表もあります。

4つの筋肉の1つ目は、「自己肯定感を高める」です。自己肯定感とは、長所も短所も両方ある自分を認め、そこに価値があると思える感覚のことです。自己肯定感を高めるための第一歩は、自分を知ることです。自分の長所・短所を認識して、自分への理解を深めます。その中で、自分の性格的な長所を知ることが、自己肯定感を高めることにつながります。本の中では性格的な強みを24個に分類されています。ここを見ながら考えるだけで自分の性格への理解が深まりました。

2つ目は、「ポジティブ感情を増やす」です。ポジティブ感情は、人生を豊かにする思考や行動につながり、心と体のエネルギーをアップしさせてくれます。普通の人は、基本的にネガティブ感情の方が多く持続し、ポジティブ感情の方が少なく忘れやすい特徴があります。そこで、ポジティブ感情を増やすために、自分の好きなことを思い切りする・感謝する・笑顔になるなどを意識することが必要です。無理にでもやって、気持ちよかった感情を積み上げることで、自然とポジティブに近づいていきます。また、出来事をポジティブに捉えるよう意識します。例えば、「雨降り」は「濡れるからいや」と捉えればネガティブですが、「植物にとっては恵みの雨。農家さんが喜ぶ」と捉えればポジティブとなります。このように、出来事を客観的に2つの面から捉え、ポジティブを選ぶ練習をしましょう。

3つ目は、「自己効力感を高める」です。「自分にはできない」と思うのではなく、「きっとうまくいく」と思える信念をもつことが大切です。この筋肉を鍛えるためには、達成体験や成功体験が必要です。何かにチャレンジして、できるようになる体験を増やしていきます。難しいことから始めるのではなく、簡単な習慣作りなどから始めましょう。まず、できたことを自分自身で認め褒めてあげましょう。そして、周りの人はできるようになったことを認めてもらったら素直に喜びましょう。

4つ目は、「心を支えてくれる人の存在」です。家族や友達との絆があることが大切です。家族との時間は、子どもにとって重要で、「自分の居場所がある」「自分らしさを認めてくれる」といった家族との絆があれば、この力は高まります。家族から支えられた経験は、誰かを支えたいという感情につながります。そして、他者へ共感することができるようになり、友達との絆も深めることができるようになります。さらに、感謝する心や相手をゆるす心も育むことができ、コミュニケーションを円滑に取ることができるようになります。

 

とても大切なことが多くて、長くなってしまいましたが、子育てをする中で、レジリエンスを意識することは必要不可欠だと感じました。これから大人になっていく子どもたちが「自律・自立」して、幸せになるために、レジリエンス教育を広げたいと思います。それでは、次の本でお会いしましょう!!

16歳の仕事塾 ー 堀部伸二・山岸慎司 著 ー

今回ご紹介する本は、中高生向けに書かれた本です。わたしがなぜ、この本を選んだかというと、小学校教師であるわたしは、教え子が卒業するとその後の子どもたちの人生に関わる機会は少なくなります。でも、子どもたちは、思春期である中高生のときに人間関係や進路について一番悩みます。そして、そこに答えを見つけることができず、自らを傷つけてしまう痛ましい事件が起こります。最悪なことが起こらないためにも、子どもたちは未来に多くの希望をもってほしい。そのために、重要なことがキャリア教育だと考えました。中高生のときに、自分の夢をもちそこに向かってがんばれる、強い心を育てるヒントがこの本に書かれていました。すごく勉強になった1冊なので、おススメです。

それでは、まとまからいきます。

「これからの変化が激しい時代を生き抜く子どもたちには、主体的にありたい自分を見つけることが大切。そのために、しっかりしたキャリア教育が必要だ」です。

 

①高校生から考えるキャリアデザイン

②高校生が自分でキャリアを考えるために

 

①高校生から考えるキャリアデザイン

この本は、中高生向けなので説明が具体的で分かりやすいのが特徴です。冒頭に出される例が面白く、分かりやすかったので紹介します。昭和の国民的漫画「サザエさん」から時代背景を説明しています。波平さんは54歳の設定で、当時の定年は55歳、男性の平均寿命は69歳です。なので、波平さんは初老のお爺さんのイメージが強いです。でも今の54歳は、会社で重要なポジションを担い、バリバリ働く元気なおじさんというイメージがあります(個人差はありますが)。ということは、たった50年近くで世の中はガラッと変わっています。今では、人生100年時代とたり、年金に頼らずに自分がキャリアを積み上げていつまででも働くことができます。年代にあった仕事を選び、転職するのが当たり前の時代となりました。

でも、中高生にアドバイスする親や教師は、未だにサザエさん時代の人が多く、「大手企業や公務員なら人生安泰。学歴があれば幸せになれる」と考える人が少なくありません。そんな人からのアドバイスを真に受けて社会に出て、その時に「話が違うぞ。学生時代に頑張ったことが社会では通用しない」とならないように、自分でキャリアについて学び考え、誰からどんなアドバイスをもらうかが重要になります。

キャリアとは、もともと「車などの轍」を意味し、今では「職歴」、広い意味では「人が生涯行う労働と余暇の全体(人生そのもの)」と言われ、とても大事なことです。マズローの5段階欲求でいうところの「自己実現欲求」を満たし、なりたい自分になっていくことでもあります。今の時代「なりたい自分」になるためには、自分に適した仕事を見付け、キャリアアップしていく必要があり、1つの会社で馬車馬のように働く時代ではありません。キャリアを考えることは、自分の幸せを考えることに直結しています。

 

②高校生が自分でキャリアを考えるために

わたしは高校時代、自分のキャリア(将来)はボッーと考えるだけで部活に明け暮れていました。当然、大学は学力的に入れるところ、どうせサラリーマンになるなら経営学部でいいかというくらいにしか考えていませんでした。その結果、大学生時代は授業はそっちのけで、友人関係・バイト・部活のことしか考えていませんでした。でも、20年前の大学生のほとんどがこの状態。就活のときにやっと、人生を考え、会社選びをする。だから、やりたい仕事でなく、採用をもらった会社に就職。就職して壁にぶち当たり、初めて自分のキャリアについて考える。そして、遠回りした後、教師になる。わたしの場合は、25歳のときにはじめてキャリアを考え、やっと最近になって、本当に自分のしたいことが見えてきました。だから、そこに向かって学ぶことが楽しくてたまりません。「学生時代にキャリアについて気付けていれば・・・」と考えてしまいます。

わたしのことは置いといて、まず、学びについて伝えます。内発的学び(今のわたし)と外発的学び(学生時代のわたし)があります。「内発的学び」はどんな自分になりたいかがあり、その自分になるために主体的に学ぶことです。「外発的学び」は、義務教育のように誰かから言われたり、なんとなく学んでおこうというビジョンの薄い学びです。キャリアを考えるためには、内発的学びが重要となります。この学びは一生継続することができ、これからの時代でとても大切なことです。日本は、大学受験などの外発的学びに疲弊し、学ぶことをネガティブに考えて、大人になってから学ばない人が多いと言われています。

わたしの就活時代(20年前)、社会人として必要なスキルとして重要なものは「協調性」「誠実性」でした。しかし今は、「コミュニケーション能力」「主体性」に変わっています。また、社会人基礎力として会社で求められる力は、大きく分けて「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つです。この力は、義務教育では教えてくれませんし、学生時代につけることも難しいです。社会人となり壁にぶち当たり、何とかしたいという思い(内発的学び)をもって初めてつく力だと思います。

内発的学びによってキャリアを真剣に考え、チャンスをつかむためにには、「好奇心・持続心・柔軟性・楽観性・冒険心」の5つの心構えが必要です。また、自分の好きなことから発想を広げ、そこに関係のある仕事を見付ければ、自然と「もっと知りたい」となり、学びに向かうことができます。

高校生からキャリアについて考えるためには、まず、自分の好きなことや夢を真剣に考え、それを実現するためにはどんな学びが必要かを考えて、5つの心構えを意識して学びを深めることが大切です。難しいことですが、キャリアについて考えることができるようになれば、自然とアドバイスをもらえる人が変わります。親や教師のアドバイスを信じて失敗するということも少なくなると思います。

 

冒頭に書いたように、わたしの本当にしたいことは、「思春期に苦しみ自分を傷つけるのではなく、早い段階で子どもたちが自分のキャリアについて考え、仕事や趣味を生きがいにして、人生を楽しみ幸せになるお手伝いをしたい」ということです。ICTが発達し、便利な社会になっているのに幸福度が上がらないのは、「なりたい自分」がはっきりせず、自己実現に向けての内発的学びが足りないことが原因の一つだと思います。わたしも、まだ、妄想の段階ですが、本を読み発信していくことから始めています。何かのヒントになれば幸いです。それでは、次の本でお会いしましょう!!

 

本当に伝わる言葉がけ  ー 小川 大介 著 ー

今回紹介する本は、がっつり「子育て」本です。子育て本は、たくさん紹介をしてきましたが、多くの著書を読むことで分かってきたことがあります。共通するのは、子育てはテクニックではなく、まずは子育ての心構え(メンタル)をしっかりと作るということです。心構えが土台となるので、それがない状態でテクニックだけを使っても、「見かけは自分の思い通りになる子どもが育ったとしても、子どもに本当の力がついておらず、子どもの幸せにつながらない」ということになってしまいます。なので、今回は心構えを中心にお伝えしたいと思います。

 

先にまとめをします。

『言葉がけを変えるために本当に必要なのは、子どもを「見る」「聞く」「観察する」こと。これができれば、子どもの行動や言動の裏が分かり、適切な言葉がけができる」

です。

①子どもが親の話を聞かない理由

②親の自信のもと

 

①子どもが親の話を聞かない理由

本の最初にアンケートがあります。これをチェックするとほとんどの親は、子どもへの愛情がしっかりあることが分かります。でも、愛情があふれ出した結果、今起こっている行動に対して、その行動を注意することに集中するのではなく、「こんなことをしていたら大人になってから困る」と未来を視野に入れて注意をしてしまいます。子どもは今の瞬間の行動にしか目がいかず、良かれと思ってする未来を見据えた注意は、子どもの心にはほとんど届いていません。でも、未来を見据えた注意も必要です。そんなときは、「今の注意」と「未来への注意」を分けて考え、区切りをつけて1つずつ話をすることが大切です。

人間の行動には必ず、その人の事情(原因)が裏にあります。子どもも同じようにタイプ別の事情があるのですが、親はそれに気づかないことが多いです。注意をしたときに行動が変わらないと、「話を聞いていない、聞いているのにやる気がない」と考え、イライラが募ってしまいます。この本では、行動を変えない子どもの事情を3つのタイプに分けています。

①「聞かない」・・・本人の不満などの意志の表れです。この場合は、何を望んでいるのか、どうしたいのかを聞くことが大切になります。

②「聞けない」・・・「やり方がわからない」ということです。言われたことは分かっているが、何をどうしてよいのか分からないや、そもそも言われたことの意味が分かっていない状態です。この場合は、具体的に詳しく説明する、一緒にやるなどが必要になります。

③「聞こえていない」・・・子どもの心が注意とは別のところにあって、音としか入っていない状態で、何も伝わっていない状態です。こんなとき、子どもはその場しのぎで「分かっている」と言いますが、注意を全く聞こうとはしていません。ここで、さらに怒りをぶちまけると逆効果です。「分かった」といってきたら、「なんて言ったか教えて?聞こえてなかった?」ともう一度、子どもに問いかけながら確認する必要があります。

まだ人生経験が浅い子どもは、親と同じようにすることはできません。3つの事情があることを理解し、子ども目線で言葉を考えないといけません。親の思いだけが強くなると「分かってくれたものと思っているから会話がかみ合わなくなる」「子どもの真意をくみ取れないから親が勝手な解釈をする」となり、円滑なコミュニケーションが取れなくなり、両者にイライラがたまってしまいます。

 

②親の自信のもと

まじめで頑張り屋さんな親御さんほど「子どもがちゃんとできるように、私がちゃんとしなきゃ」と思い、子育てに不安があって自信をもつことができていないことが多いです。でも、このような親御さんのほとんどが、80点以上の子育てができているにも関わらず、できていないことに目が行き、できていることを見ていないんです。だから、①「今の自分にOKを出す」=「ありのままの自分を認める」②「わたしが頑張らなくては」と1人で抱え込まないことが大切です。

完璧な親を目指すのではなく、現状の80点でもOK。と自分に自信をもつことが、幸せな子育ての土台となります。親が完璧だと、家庭に「完璧にやらないとダメ」という空気感が生まれ、子どもが完璧なことと比べるようになり自信が育ちません。逆に、親が晩酌でぐだぐがするくらい少しテキトーな方が、家庭に隙間ができ、「正解ばかりを出さなくても自分なりの正解でいい」と、判断力が育ちやすくなります。さらに、そんな親でも自分に自信をもっていいれば、「足りないものがある自分でも大丈夫」と自信へのハードルを下げることができます。自分が疲弊するくらい頑張ったのに、「子どもも自分も自信がない」状態では、幸せな家庭に近づきません。頑張りすぎは、親にも子にもいい影響が出ないことが多いと知れば、多少、楽に子育てに取り組めます。この気持ちがとても大切です。

頑張らなくても「いい親」になる方法は、子どもも自分も思いっきり楽しそうにすることです。家庭の雰囲気が明るく、楽しい状態にできる親が、本当のいい親だと思います。

「成績優秀、素行も素晴らしい」子どもが育ったとしても、親の本当の自信はつきません。親が自信をもつためには、今のこの瞬間を楽しみ、悩んでも前向きに動き、何よりも「今の自分を大好き」になることです。そのために、口癖にしてほしいことは、「まあいいか」「何とかなるでしょう」「大丈夫」です。子どもの行動が、思い通りにいかなくてもこの言葉を心で唱えましょう。そして、何より、わが子は自分の子どもだから「大丈夫」と余計な心配をせず、子どもを信頼することができれば、子育ては100点満点だと思います。

 

今日は、著者の考えをもとに、ほとんど自分の思いを伝えるような紹介となりましたが

子育てで本当に大切なことを知っていただけば、苦しむママが減ると信じています。本には、具体的なよい言葉がけやNGワードなども載っています。そちらは、本を手に取ってできることから実践していただければと思います。

それでは、次の本でお会いしましょう!!

一流のプロ講師が実践している話し方 ー 加藤 恵美 著 ー

今回、紹介する本は、「話し方」の本です。なぜこの本を選んだかというと、近々大勢の人の前で話す機会をいただいたことと、教師は教え方以上に話す技術を学んだ方がいいと考えたからです。ということで、いつもの図書館で「話し方」をキーワード検索し、発見した本です。わたしのニーズにぴったりの本でした。これまで以上に話すことが重要になると言われているので、とても勉強になった本です。著者の加藤さんは、有名講師を含め、800人ほどのプロ講師をプロデュースされた方です。自称「話が上手な人の話を一番聞いた人間」と言われているように、話し方をかなり研究されているので、とても分かりやすい本でした。おススメです。では、さっそく、まとめから行きます。

 

「話し下手、あがり症の人でも大丈夫。話すときの考え方やポイントを学び、伝わる話し方を知れば、コミュニケーションも楽になる」です。

 

2つのことを中心に、お伝えします。

①話し方を意識すれば「結果」が変わる

②話し下手でも思いが伝わる準備と組み立て

 

①話し方を意識すれば「結果」が変わる

授業でもプレゼンでも一番大切なことは、何のために話すのかという目的です。例えば、死から生還した有名な講師の方が話す目的は、「人生一度きりであり、だから大切に生きなければいけない」だそうです。これは、自分の経験から使命感をもって話をされるので聞き手の心にしっかりと届くことになります。テクニックやコツも大切ですがまず、自分の伝えたい思いを明確にもつことが大切です。

話し手は、聞き手の性格を理解し相手に合わせた話し方をすることで、伝わり方が大きく違ってきます。自分の伝えたい思いをそのまま伝えても、相手のタイプに合わせて話を変えないと「ただの自慢話」「話が長い」と聞き入れてもらえなくなります。

本では、4つのタイプが紹介されています。

①イケイケタイプ・・・自己主張が強く、意見を押し通せるのでカリスマ性があり、行  動力や責任感もありますが、気が短く人への配慮が乏しい傾向があります。このタイプの人は、「目標・夢」などの言葉に強く惹かれます。

②ノリノリタイプ・・・社交的でよく話し、人間関係を広げて楽しく仕事をし、人脈を広げるのが得意ですが、飽きっぽく話がそれたりおおざっぱに話したりする傾向があります。このタイプは、理屈っぽい話が苦手で、褒められたり自分の話をしたりすることを好みます。

③コツコツタイプ・・・分析が好きで、意志が強く、一人で仕事をするのを好みますが、柔軟性にかけたり慎重すぎたりする傾向があります。このタイプは、データで根拠を示しながら話すと納得し理解し合えますが、効率が悪いことや感覚的に話されることを嫌います。

④ニコニコタイプ・・・口数は少ないものの人付き合いがよく優しく協力的ですが、人に気を使いすぎて判断力が鈍い傾向にあります。このタイプは、質問などで話しやすい場を作ってあげると興味が高まりますが、強引に話させようとすると警戒して距離を置かれてしまいます。

このように、特に一対一で話すときには、相手のタイプによって話し方を使い分ける必要があり、これができればコミュニケーションが円滑に進みます。また、タイプによってNGな言葉を使ってしますと、一気に信頼を失うことがあるので注意が必要です。

このタイプは、夫婦や職場でも生かせると思います。わたしはコツコツタイプ、妻はノリノリタイプで真逆なので、NGワードを使わないように意識しようと思います。

 

②話し下手でも思いが伝わる準備と組み立て

上手に話すにはセンスももちろん必要です。お笑い芸人など、人を引き付ける話し方をする人にあこがれますよね。でも、センスだけで成功している人は一握り、芸人でもネタ帳をもったりネタになりそうな場所に行ったりと事前に準備をしています。プロがするぐらいだから、私たち素人も準備がとても大切になります。ということは、どんなに話し下手な人でも準備のコツを知れば、上手に話せるようになります。

準備のポイント

①魅力ある情報を仕入れる・・・相手のことを知り、相手が求めていることを見つけることが大切です。ネットなどだれもが取れる情報ではなく、相手を喜ばせるための生の情報が必要です。相手のいる場所や周りの環境などを調べるために、足を運ぶなど手間をかけることが誠意として伝わり、信頼関係を築くことにもつながります。

②情報を基に雑談する・・・本題ではなく、雑談しているときに大切なことが決まるっていうことがあります。これは、気楽に話しているときの方が、話し手の人柄が伝わるからです。この時の印象を良くするために、相手がうれしくなる雑談をします。この雑談のときに、生の情報が役に立ち、地元の話や共感できる失敗話など相手のガードが緩くなるような話ができれば、いい人アピールをすることができます。

 

上手く話そうとすると話すことばかりに集中してしまい回りが見れなくなってしまいます。また、上手に話している自分に満足して、結局相手に伝わらないということもあります。だから、話は上手くなくても、うまく伝わるように話すことが大切です。そのためには、話の内容をしっかりと組み立てる必要があります。

組み立てのポイント

①5つの要素を意識する・・・「話の内容」「話す態度と声」「話の整理」「具体的に話す」「自慢話を抑え失敗談を笑いに変える」です。「話す態度と声」はかなり重要で、メラビアンの法則にあるように視覚(態度)55%、聴覚(声)38%と言われています。どんなにいい内容でも、93%が悪い印象なら、話を聞いてもらえません。

②クイズやワークを入れる・・・人はどんなに興味のある話でも、何時間も話を聞いているだけでは、集中力が切れたり、ボッーとしたりしてせっかくの話が伝わらないことがあります。そんなときには、アイスブレークのように面白い事例を使ったクイズを出して気分転換したり、聞き手同志でグループを作って話し合ったり意見交換したりするワークを入れることで、再度、話に興味を持たせることができます。

③聞く気を失うこと・・・話が脱線しすぎて、元の話が分からなくなること、言い方を変えてはいるものの伝えたい内容が繰り返されること、話と関係するものの相手が聞きたくない自慢話を気付かずにすることなどがあります。話し手と聞き手の温度感を感じ、会場の雰囲気を考えながら話の内容を臨機応変に変えることも大切になります。

 

今回は、本の内容からポイントになることをピックアップして、お伝えをしましたが、伝わったでしょうか。文章なので、話しているときとは違いますが、読み手に伝わるように内容や組み立てなどを工夫していきたいと思います。いつかは、文章の書き方の本もご紹介したいと思います。それでは、次の本でお会いしましょう!!

 

ミライの授業 ー 瀧本 哲史 著 ー

今回は、中学生向けの本をご紹介します。夏休みということもあり、「自分ならどんな読書感想文を書くかなー」と考えていました。そして、ひらめきました。「そうだ。本気で読書感想文を書いてみよう。」

読書感想文は夏の課題、不人気No1です。書き方の手本になればと思っています。教えてはいるものの書くのは久しぶりです。読書感想文という形で、本の紹介をしたいと思います。では、次からが本文です。

 

題 「ミライの授業」から受けた衝撃  

 わたしは、図書館で本を探していました。すると、「ミライの授業」という本の背表紙に目が留まりました。なぜなら、「ミライ」という言葉に、ワクワクし想像力が膨らんだからです。本を手に取り、目次を見ると、様々な世界の偉人が登場していました。わたしは偉人についても興味があるので、「この本を読みたい」と強く感じ、気付けば本を借りて読み始めていました。

 この本は、ミライある中学生に向けて、昔・今・未来の世界のあり方を伝えている本です。そして、「きみたちが未来をつくる人になろう。」という強いメッセージを感じる本です。わたしは、本を読みながら、過去の偉人のことを知るとともに、ミライのことを想像してずっとワクワクしていました。

 まず、とても印象に残っている二人の偉人を紹介します。1人目は、伊能忠敬です。歴史の勉強で江戸時代に地図を作った偉人だと知っていましたが、この本でさらにすごいことが分かりました。まず、驚いたことが50歳を過ぎてから日本中を歩き回り、今とほとんど変わらない地図を作り上げたことです。忠敬は、初めは天体に興味をもち、世界の天文知識を学びます。ロシアが日本に攻めてくるかもしれないから、「蝦夷地の地図を作ってほしい」という幕府からのお願いで地図を作り始めたというきっかけもあったそうです。次に、19歳も年下の天文学者高橋至時に弟子入りして、2人が中心になって地図を作ったことも初めて知りました。至時の「地球の大きさを正確に測りたい」という夢を2人で叶えるために地図を作ったという思いも知り、驚きました。わたしが忠敬なら年寄りになってから日本中を歩くのはつらいし、途中であきらめていたかもしれません。でも、2人は夢があったから最後まで頑張ることができたのだと思います。

 2人目は、ハリーポッターの作者J・Kローリングです。わたしは、ハリーポッターシリーズが好きなので興味をもちました。彼女は、作家になりたいという夢を小さなころもっていましたが、成長するにつれて「夢を追っても将来安定した生活ができないと困る」という周りからの考えに流されて、普通の生活をしていました。小説を書くことは好きなので、趣味で小説は書いていたようです。彼女が28歳の時、ハリーポッターの原案が思いつきます。しかし、この時、結婚をし子どもも育てていたので、そちらを優先し小説の続きは書けていませんでしたし、書いた小説を誰にも見せていませんでした。勇気をもって妹に読んでもらうと「とてもおもしろい」と褒めてもらいます。これをきっかけに出版しようと、最後の7章まで書き上げます。出版社にお願いしますが、どの出版社も相手にしてくれません。唯一Okを出した社長がいました。なぜなら、8歳の娘が読んでおもしろいと言ったからです。こんな奇跡が起こったことで、本となったハリーポッターシリーズは世界で話題となり、映画も大ヒットしました。わたしは、彼女の気持ちがとてもよく分かります。夢はあるものの、それが本当に実現できるかが不安で夢をあきらめかけていました。ローリングのように勇気を出して、夢のために努力して、みんなに認めてもらえるような人になりたいと強く思いました。

 まだまだ、紹介したい偉人はたくさんいます。今までは、「大人ってつらそう。大人になりたくない。」とネガティブに思っていましたが、この本を読んだことで、ミライを作るのは自分だ。ミライのために、今できることを精一杯やっていきたいと思いました。この本は、わたしのミライを変えるきっかけになりました。

 

以上がわたしの読書感想文です。1600字(原稿用紙4枚)程度にまとめましたが、本当に紹介したい偉人がまだまだいっぱいいて、本当なら3000字くらい書きたいところです。中学生向けなので、分かりやすく読みやすい。読書の初心者の方にもいい本だと思います。おススメ本なので、手に取ってみてください。では、次の本でお会いしましょう。
 

2020年からの教師問題 ー 石川 一郎 著 ー

今回からは、またいつも通りのやり方に戻って、1回で1冊、最初にまとめをするという従来の形で本を紹介していきたいと思います。

さっそく、今日紹介する本は、現役教師であるわたしにとって気になるタイトルだったので、すぐに手に取りました。私自身、学校現場で働いていて、違和感を感じていたので「これからの教師の仕事って何」と考えることがありました。その答えになる部分が多かったので、同じようなことを考えている先生にはぜひ読んでもらいたいです。

著者の紹介ですが、様々な私立学校で校長を務められ、教育研究機関を立ち上げて、これからの大学入試や学校教育を変えていこうという熱意がある方です。

 

では、内容を短くまとめます。

「これからの入試は、知識の詰込みではなく、知識の活用と答えのない問いに対する自分の考えをもつことだ。そのためには、従来の学校教育を変え、なにより教師の意識を変えることだ。」です。

 

① 日本の教育に足りないものは何か

② 日本の教師に足りないものは何か

③ 教師の役割は教えることではない

 

① 日本の教育に足りないものは何か

新しく文科省が定めた教育目標が、①十分な知識・技能、②答えが一つに定まらない問題に自ら解を見出す思考力・判断力・表現力、③主体性をもって様々な人々と協働して学ぶ態度です。これは、AIをはじめ、変化の激しい時代を生き抜くために必要な力だと言われています。この力を高めるためには、これまでの知識を教えるだけの授業では無理です。

例として挙げられていたのは、読書感想文の授業です。これまでは、本が指定されていて、道徳的な面などを考慮するとみんなが似た文章を書くので、少しのスペースの中に、どのように自分のオリジナルを表現するかがポイントでした。学生にとっては、本音で感想文を書くのが難しく思考停止状態でした。これからは、本の内容に対して教師が問いを立て、学生に議論をさせてから、「自分ならどうするか」という考えを書かせます。こうすることで、読解力はもちろん、自分と人との関わり、これまでの生き方を考慮した文になるよう、表現を工夫しながら書くことになります。

このように、答えのない問いに対して自らの答えを出すことが重要になります。しかし、これだと教師が学生の柔軟な考えを評価しないといけなくなります。教師にとっては、新しいことが増え、ただでさえ過重労働なのに、さらに負担が掛かることに不満をもつ人も多くなります。だとしても、これまでの一方的な知識詰込みから、問いに対して学びを生かす「学問」に切り替えないといけません。

 

② 日本の教師に足りないものは何か

1つ目は、「教師なのに主役感をもってしまう」です。これは、わたしもそうですが、先生あるあるだと思います。「自分の授業や指導のおかげで、生徒が結果を出したり生徒が成長したりしている」とアピールしたくなります。でも、ここで大切なのは、生徒の成長だけに焦点を当てるのではなく、自分を主役にしているところです。確かに力があるので、みんなから信頼されたり人気があったりします。しかし、これまでの経験で作り上げた自分の指示を徹底したいので、指示が通るように生徒をコントロールします。こうすると、自分で考えるより指示に従っている方が結果が出るので、子どもたちは自分で考えることをしなくなり、指示待ち人間になってしまいます。これまでは、最短距離で正解に向かうのでよかったのですが、これからは、正解がない問いに対して、指示をだすことができず、教師も生徒も思考停止になってしまいます。生徒の主体的学びにはなりません。

2つ目は「生徒の答えなき答えを許容できない」です。これまでは、1時間の授業で教師が伝えた知識を理解し、スッキリして授業が終わる。感想には「よく分かりました」と書いてある。そんな授業が、良い授業でした。しかし、答えのない問いを出したときに、生徒はそれぞれの考えを出してきます。それは、全て生徒自身の答えとなり、正解となります。でも、生徒は時間内で出した答えなので、自分の答えに納得できていないかもしれません。これで授業が終わると、教師も生徒もモヤっと感が残ったままです。こうなると、不満が残り関係が悪くなるかもしれません。これまでのスッキリした授業とは違うし、新しいことをしてモヤっとするくらいならこれまで通りで行こうとなってしまいます。モヤっとさせないためには、授業後の生徒の質問に答えを出すのではなく、先生の考えとして伝えたり問い直したりしていく必要があります。

3つ目は。「知的好奇心を忘れている」です。これまでの先生の仕事は、教科書や資料で教材研究し、それを子どもたちにアウトプットする。こうなると、専門教科だけを調べることになり、それ以外の情報をインプットする時間的余裕がなくなり、好奇心が無くなってしまいます。こうなると、多様な問いを生徒に投げかけることができず、やはり従来の授業に戻ってしまいます。教師が、積極的にインプット作業をすることで、知的好奇心が高まり、生徒が興味を持つような問いを出せるようになります。こうすれば、生徒の反応が良くなり、楽しく授業をすることができるようになります。

 

③ 教師の役割は教えることではない

理想の教師は「ティーチャー」ではなく、「プロデューサー」です。これから、答えのない問いに対して、「教える」「教わる」の上下関係ではいけません。これからは、教師と生徒がともに考え関わり合いながら、お互いを高め合う関係が望まれます。そして、生徒の能力をうまく引き出す力が大切になります。

企業も、これまでのトップダウン型から、上司部下の上下関係を意識せず、ともにミッションを解決する同志として、チームワークを重視するネットワーク型に変わっていきます。ネットワーク型では、チーム全員が自分の答えをもち、本音で話し合う中で上司が調整し最適解を出す形が大切です。これを学校でもやっていく必要があります。

プロデューサーである教師は、生徒のまだ見えていない能力を引き出す力も必要です。ここで紹介されているのが「ジョハリの窓」です。これは、心理学の用語で、自分と他者がコミュニケーションを取りながら、自己分析をし自己成長に気付き、新しい窓(能力)を開けるという方法です。詳しくは、本で確認してもらうことにして、教師と生徒がフラットの関係で、問い掛けながら生徒の考えを引き出すことで、気付いてなかった自分の才能に気付き、生き生きと成長していく姿を見ることがこれからの教師の一番のやりがいです。

 

新たな時代の教育は、教師に新たなやりがいを与える。そのやりがいは、生徒の新しい能力をともに見つけていくことだと感じました。教師として、新しい価値観をいただいたこの本に感謝して、終わりたいと思います。それでは、また次の本で!!